2005.01.01 sat.
ゆっくりと起きてお雑煮を食べて葉巻を吸い、夜はお酒を飲みながらビデオで 『カレンダー・ガールズ』 を見る。
2005.01.02 sun.
晴れ。夕刻、大蟻食と一緒にゴンゾの家へ。ゴンゾをなでて、寄せ鍋を食べて帰宅する。
2005.01.03 mon.
晴れ。午後から曇り。暖かい。朝、大蟻食と一緒に浜離宮へ。昨年と同様、放鷹術の実演を見学する。天気がいいからなのか、オオタカの一羽は放されたあとカラスに喧嘩を売りにいって戻らなくなり、もう一羽は狩の実演でハトを追って舞い上がり、そのハトが逃げるのをそのまま追って戻らなくなる。どうなるんだろう、と心配していたが、結局どちらもすぐに回収されていた。放鷹術を見学したあと、徒歩で銀座へ。昨年と同様、ビヤホール「ライオン」七丁目店でビールを飲んでソーセージを食べ、それから渋谷へ移動してLe Connaisseurへ。シガリロを買い求める。帰宅して、夜はあまりお腹が空いていない、ということで適当に食べ、食べながらビデオで 『グッバイ、レーニン!』 を見る。実に立派な映画であった。
2005.01.05 wed.
晴れ。昨日あたりから胃が壊れている。年間を通してほとんど魚類を食べないのに、正月のこの時期だけ魚とか魚系のダシであるとか、そのたぐいのものをいきなり大量に摂取することになるので消化器系がおかしくなるのである。そうなると和風のダシ味にも妙な反応をするようになって、そば屋の前を通っただけで本当に気分が悪くなり、ベーコンと一緒にザワークラウトを煮込んだような料理が食べたくなる。午後、大蟻食はボクササイズへ。夜、大蟻食と一緒にビデオで 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ 』(完全版) を見る。85年の公開当時からだとほとんど20年ぶり、そのあとビデオで一度見ているけれど、完全版は今回が始めてである。やっぱりこれは立派な映画だ。
2005.01.06 thu.
曇り。まだ調子が戻らない。夜、大蟻食と一緒にビデオで 『ミラーズ・クロッシング』 を見る。
2005.01.08 sat.
晴れ。朝、大蟻食がポトフを仕込む。昼食は妻家房。夜、ポトフを食べながらビデオで 『ロード・トゥ・パーディション』 を見る。劇場で見たときの印象は揺らぐどころか強化された。すばらしい。
2005.01.09 sun.
体調を崩す。
2005.01.12 wed.
引き続き体調を崩している。午後、早川書房から『サラミス』が到着。すばらしい装丁である。
2005.01.13 thu.
晴れ。体調は回復。アイン・ランド『水源』(1943年、藤森かよこ訳、ビジネス社)を読み終える。なんとなくフランク=ロイド・ライトを思わせる孤高の建築家が1920年代から30年代のマンハッタンを舞台に孤高の個人主義を貫いていると、無私を唱道する邪悪な社会改革主義者でコラムニスト、という悪役がいろいろと邪魔をする、といった内容で、上下二段組、1000ページ超という大長編なのである。ソフトカバーとはいえ1キロを越える重量があり、だから寝床に横たわって読んでいると腕がかなりくたびれる。体調を崩している人間にはこれはいささか重荷であった。一種のサクセス・ストーリーとしての外観を備えているので話を追う分にはそれなりに面白いが、それでもやはり長すぎる。作りは全体に素人臭くて締まりが悪く、どちらかと言えば場面のデザインが先にあって、場面から場面へとつながる連続性はそれほど重視されていない。人物造形は全体に平板で、平板さの理由は主として長すぎる演説にある(主人公の最後の法廷弁論などは延々と12ページも続く)。崇高な個人がべらべらと他人を攻撃しすぎるし、邪悪なアカも内容のないことを喋りすぎる。そしてなお悪いことに作者本人が主人公の凡庸糾弾に同調するし、作者は悪いコラムニストを政治的に嫌悪しているので魅力を与えようとしていない。冷静に書かれたものではないのであろう。どうせなら悪いコラムニストが毎回毎回どうしようもなく凡庸な建築家を見つけてきては、主人公に叩きつけて、こいつと戦え、というような作りのほうがもっと面白かったのではあるいまいか。わたしは小説に共感も教訓も思想も求めていないので、アイン・ランドの読者としてはおそらく最低の部類に属することになるのである。
2005.01.14 fri.
晴れ。夜、大蟻食と一緒にビデオで 『摩天楼』 を見る。原作はアイン・ランドの『水源』である。原作を読まずに見ると、おそらくちんぷんかんぷんであろう。原作を読んでから見ると、映画と同様、原作もまたとんちんかんなのがよくわかる。
2005.01.15 sat.
雨。寒い。大蟻食は学校へ。わたしは『メタルギア・ソリッド3』をアラートなしでクリアする。つまり誰からも一度も発見されなかったのである。ついでにツチノコも生け捕りにしたので(そうするとみんなにほめてもらえる)ステルス迷彩(見えなくなる)と無限フェイスペイント(弾薬が無制限になる)を手に入れた。夜、大蟻食と一緒にビデオで 『つばさ』 を見る。1927年に製作されたサイレントの戦争映画超大作である。話には聞いていたけれど、実際に見るのはこれが初めて。実に立派な映画であった。
2005.01.16 sun.
雨。寒い。アイン・ランド『肩をすくめるアトラス』(1957年、脇坂あゆみ訳、ビジネス社)を読み終える。『水源』が上下二段組、1000ページ超なら、こちらは上下二段組、1200ページ超。世界の大半の国々が人民国家を選択し、アメリカ合衆国もまた公共の福祉を唱える無能な盗っ人によって支配されている時代(ディストピア小説なのである)、有能な企業家は国家の名をかたる「たかり屋」どもの搾取の対象となり、怒れる実業の騎士たちは自分の会社も資産も放棄して行方をくらまし、同様に優秀な科学者や才能ある芸術家なども姿を消し、「たかり屋」どものとどまることを知らない貪欲によって経済が衰退の道を一直線にたどる一方、行方をくらました優秀な頭脳はロッキー山脈の隠れ谷に合理主義のアトランティスを築き上げ、そこには「たかり屋」は一人も存在しないので、対価なしに何かがおこなわれるということもまたないのである。で、もちろんこの国家に反逆するビジネスマンたちが正義の味方で、いずれもみな賢くて有能で、一方、政府にたむろする「たかり屋」たちは無条件にバカでマヌケで嘘つきぞろい、ということになっていて、その徹底的な決めつけぶりと狭量さがおそらく「思想小説」たるゆえんであろう、とは思うものの、わたしは小説に共感も教訓も思想も求めていないので、だから、ただただ造形のまずさにうんざりする(60ページ以上続く演説は途中で読むのをやめたからね)。なりゆきでうっかり読み始めて、アイン・ランドにかれこれ一週間も使っているが、これでトマス・ベルンハルトの際限もなく横ずれしていくテキストに戻れるのだと思うと少しほっとする、とわたしは大蟻食に言った、とわたしは思った。
2005.01.18 tue.
晴れ。午後、大蟻食と一緒に 木村晴美さん の個展にお邪魔する。『サラミス』のカバーイラストなどを描いてくださった方である。境界線をにじませたような独特の手法が面白い。
2005.01.22 sat.
晴れ。寒い。大蟻食は学校へ。夜、渋谷で落ちあって一緒に 『オーシャンズ12』 のレイトショーへ。渋谷シネパレス(ロフトの向かいのビルの七階)で五割ほどの入り。1960年代の怪盗映画のようなものを手作り感覚でリズムよく、オールスターキャストでやる、という趣向なのであろう。最初から隠しもしない内容の乏しさ、展開の軽さ、強引さといったものがどうもそのあたりに通じていて、というわけで、わたしはとても気に入ったのである。
2005.01.23 sun.
雨ときどき雪。かなり寒い。午後、大蟻食と一緒に葉巻を吸いながらパティオ・レモンというイタリアのお酒を飲んでみる。レモンフレーバーの発泡性ワインである。甘口。悪くないと思う。夜は萬珍軒へ。鳥そば、チャーハン、ホイコーロー、ギョウザを注文し、満腹したあとは寒い寒いとつぶやきながら帰宅する。
2005.01.24 mon.
晴れ。寒さはいくらか和らいだ模様。メアリー・ローチ『死体はみんな生きている』(殿村直子訳、NHK出版)を読み終える。死体の利用方法、あるいは処理方法に関するルポルタージュである。著者は好奇心をむき出しにして美容整形の実習教室(生首が並んでいる)、解剖学教室(死体がある)、腐敗研究所(様々な段階の死体が並んでいる)、エンバーミングの教室、人体衝撃試験の現場などに首を突っ込み、様子を報告し、そこにいる人々に質問を浴びせる。報告されているのは多くの場合、珍しい光景であり、こちらもまたそれなりに好奇心が刺激されるが、報告の仕方は例によって現代ジャーナリズムの最悪の見本のような代物であり、独りよがりで不躾で不真面目で、質問に答えた人々の忍耐に報いていない。題材の突飛さから一読には値するものの、難点が目立つ著作である。
「本棚の一角」平山瑞穂『ラス・マンチャス通信』越谷オサム『ボーナス・トラック』 を追加した。
2005.01.27 thu.
晴れ。大蟻食は学校へ。夜、大蟻食と一緒に「クルン・サイアム」自由が丘店へ。昨年の11月にできたというタイ料理のお店である。真面目な味付けでなかなかにおいしいと思う。満腹して帰宅。お茶を入れて、ビデオで 『トロイアの女』 を見る。ビデオがあったとは知らなかったのである。 『イフゲニア』 のビデオはやっぱりないみたいだけど、どうにもならないのかなあ。
2005.01.29 sat.
曇り。湿度が高い。夜、ファンタジーノベル大賞受賞者十数人で集まって池袋某所で新年会。
トーマス・ベルンハルト『消去』「本棚の一角」に追加した。
2005.01.30 sun.
アンドレイ・クルコフの『ペンギンの憂鬱』を読んでいる大蟻食がいきなりシシャリクが食べたいと言い始めたので、夕方、渋谷のロゴスキーへ。ピロシキ、ペリメニ、ボルシチ、シシャリクなどを食べ、最後にウズベク風のピラフを食べる。それから渋東シネタワーに移動して 『オペラ座の怪人』 を見物する。最終回で、ほぼ満員。かなり不満の残るしろものだが、それでも劇団四季の公演よりはましであった。
2005.01.31 mon.
晴れ。大蟻食はペンクラブの会合へ。わたしは夕食を一人で食べて、それからパゾリーニの 『アポロンの地獄』 を見る。見終わった頃、大蟻食が帰ってきたので、並んでビールを飲みながら 『王女メディア』 を見る。
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