ミラーズ・クロッシング
- Aloysius' Rating: 7/10
1990年 アメリカ 115分
監督:ジョエル・コーエン
出演:ガブリエル・バーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、アルバート・フィニー、ジョン・タートゥーロ、ジョン・ポリト、スティーヴ・ブシェミ


1930年前後のアメリカ。街を仕切るボス、レオの元へイタリア系ギャングのキャスパーが訪れる。ノミ屋の一人バーニーを始末する許可を得るためであったが、それというのもキャスパーが仕組んだボクシングの八百長試合に関する情報をノミ屋の一人、バーニーが客に売っているからであった。もちろんレオが指摘したとおり、八百長試合に関する情報はたくさんの者が知っていて、だから疑うべき相手もそれなりにいたわけであったが、倫理と精神の問題を重視するキャスパーは人格から評価して犯人はバーニーに間違いないと主張する。ところがそのバーニーの姉ヴァーナはレオの情婦であり、バーニーもまたレオの庇護下にあり、というわけでレオはバーニーを渡そうとしない。キャスパーはレオの対応を罵り、レオの相談役トム・レーガンもまた戦争を避けるためにバーニーをキャスパーに渡すべきだと主張するが、レオは受け入れようとしない。替わりに先手を打ってキャスパーを攻め、キャスパーは報復にレオの自宅を襲撃し、姿を消した情婦ヴァーナは相談役トムの寝台に寝そべり、そのトムはレオとキャスパーのあいだを泳ぎながら賭博の借金に追われている。
古めかしいスタイルの暗黒映画で、やるべきことは全部やる。ガブリエル・バーンがハンフリー・ボガートのように台詞を喋り、ギャング同士も警察も賭博の元締めもみな顔見知りで、殴り合っていてもなんとなく馴れ合ったような雰囲気があり、それでも暴力には躊躇しない、そんな危うい世界なのである。映像は美しくて重たい。ガブリエル・バーンが頭は切れても強固なプライドのせいで生きるのがへたくそなチンピラを演じて実にかっこよく、親分役のアルバート・フィニーもまたかっこよくて、トンプソンを撃ちまくって護衛無用の強さを発揮する。そしてコーエン兄弟風の、ということになるのだろうか、どこか1拍抜けたような文字通りの間抜けさがいつもどこかに潜んでいて、それがそこはかとないユーモアと残酷さを盛り込んでいるところが新しい。残念ながらプロットの整理が悪く、全体を通じてのバランスが悪いが、これはおそらくカメラがガブリエル・バーンに寄りすぎているためであろう。そういうことが目的ならば、つまりそういう映画なのだということになる。

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