2004.12.01 mon. 中学生が紙幣偽造で逮捕される。やってしまうところが見上げたものであると思うので、捕まったこどもたちをあまり責めないでほしい。 お知らせです。来年1月(来月、ということになりますが)に5作目の長編『サラミス』が早川書房から刊行される予定です。これは紀元前480年の、いわゆるペルシア戦争におけるサラミスの海戦を扱ったもので、つまり、わたしとしては初めての「歴史小説」ということになるのかもしれません。時代としてはプラトンが生まれる半世紀前、ソクラテスが生まれる10年ほど前、ペリクレスが15歳の頃のにあたり、中国は春秋戦国です。小説ではヘロドトスの『歴史』第八巻の40節から108節までの内容を扱っていて、これは岩波文庫版だと下巻の172ページから212ページまでに相当します。 2004.12.02 thu. 晴れ。『銀河ヒッチハイク・ガイド』が映画化されたみたい。アメリカでは2005年公開予定。日本は? オフィシャルサイト: http://hitchhikers.movies.go.com/main.html 2004.12.03 fri. 夕刻、大蟻食と一緒に青山へ。日本ペンクラブ女性作家委員会の主催による「女性と戦争 III」というシンポジウムにもぐり込み、高遠菜穂子さんのイラク現地報告などを聞く。終了後、大蟻食と一緒に渋谷へ戻り、結婚記念日、ということで、ロゴスキーでたくさん食べて、マークシティの西端にあるシガーバー"Le Connaisseur"でお酒を飲んで葉巻を吸って帰宅する。 2004.12.04 sat. 大蟻食は午前中から学校へ。わたしはビデオで 『リクルート』 を見る。余計な話を入れたせいで単純な内容になっている。夕方から雨。大蟻食の帰りを待ちながらフォーのスープを仕込み、ベトナム風揚げ春巻きの準備をする。ライスペーパーを扱うのはこれが初めて。難しい、ということはよくわかった。あまりきれいには揚がらなかったけど、とにかく味は揚げ春巻きになっていた。大蟻食と一緒に食べる。夕食のあとお茶をいれてアイスクリームを食べて、それからチャック・パラニューク『ファイト・クラブ』を読み終える。暴走する自己破壊願望に包囲されて頭がぐるぐるするという話である。なかなかに面白い。ただ結末に関して言うと 映画 のほうがダイナミックでシニカルであった。これは映像が使える強みであろう。引き続き澤井啓夫『ボボボーボ・ボーボボ』(集英社JUMP COMICS)1巻を読み始める。昔、小学校の学級新聞でこれと似たような絵を見た記憶がある。全体にその水準だと思う。というわけで読み終えることができなかった。 2004.12.05 sun. 夜半から激しい南の風と雨。日中は晴れて九月の気候。午後、大蟻食と一緒にモンブランへ。お茶をする。夜はまたフォー。それだけでは足りないような気がしたので、豚の挽肉とコリアンダー、タマネギなどをこねて、キャラメルのような具合に大葉でくるんで焼いてみる。いちおう、これもベトナム料理。悪くない。夕食のあと、一人でレスター版 『三銃士』、 『四銃士』 を続けて見る。DVDがあるのに気がついて、TSUTAYAで借りてきたのである。高校のとき以来だから四半世紀ぶり。 2004.12.08 wed. 晴れ。大蟻食はボクシング・ジムへ。小田扉『団地ともお』(ビッグコミックス)1巻を読む。団地を舞台にした小学生マンガである。ダイアログが練り込まれていて、こどもの行動への目配りがいい。さらに吉崎観音『ケロロ軍曹』(角川コミックエース)1巻を読む。カエル型宇宙人が地球を侵略するのである。忠義なわりには二心があり、狡猾だけどやっぱり間抜けなケロロ軍曹のキャラクターがよい。ちょっと好きかもしれない(女の子のキャラ萌えはともかくとして)。さらに星野之宣『神南火』(ビッグコミックス)を読む。宗方教授の女性版で、やたらと化粧の濃い女性の女性史研究家が古代史を調べる。帯には高橋克彦氏絶賛とあるけれど、わたしはあまり誉められない。ひどく渋いというのか、つまり薄味なのである。正直言うと、70年代からのファンとしては、『ブルーシティ』の続きを描いてほしい(『バトルブルー』があったにせよ)。夜、大蟻食と一緒にビデオで 『モスキート・コースト』 を見る。 2004.12.09 thu. 曇り。午後、モンサンクレールへ出かけていってセラヴィ、クイニー・アマン、リンゴのタルトを買ってきて、家でお茶をする。これでこのお店のお菓子を9種類を試してみたことになるけれど、やはり口にあわないみたい(どれもとってもきれいなんだけど)。これだけの有名店でこれだけはずれるというのも不思議と言えば不思議だが、結局、好みの違いということになるのだろう。たとえばケーキは全体にショートニングの味が舌に触るし、リキュールの味が目立ちすぎる。まるでしっとりとしていないクイニー・アマンというのもわからないし、リンゴのタルトはリンゴの量が少ないからか、火がとおりすぎてリンゴの風味が損なわれている。というわけでモンサンクレールはこれで打ち止めにしてこちらはモンブランに専念する。 2004.12.10 fri. 曇りのち晴れ。大蟻食がちょっと風邪気味。そうしたらわたしもちょっと風邪気味。夜、ほとんど怖いもの見たさから 『ロスト・イン・トランスレーション』 を見る。駄作であろう。それとも 『ゴッドファーザーPART III』 のときのあの悪印象がまだ尾を引いているのか? 2004.12.11 sat. 朝、テレビで『ケロロ軍曹』のアニメを見る。面白いじゃん。大蟻食は風邪でダウン。モンブランに専念すると宣言した舌の根も乾かないうちに、パリ・セヴェイユでケーキを買う。ピーコック自由が丘店の近くにできたケーキ屋さんである。仕上がりに個性はあるけれど、傾向としてはモンサンクレールに近いみたい。『美味しんぼ』の90巻(!)に「感動の多い料理店」というエピソードがあって、そのなかでフレンチのデザートを食べるとき、「いいお酒をたっぷり使っているからお菓子がおいしいわ」という台詞が登場する。もちろん肯定的な台詞である。つまり、そういうケーキなのだと思う。買ってきたケーキを食べながら 『デビルズ・バックボーン』 というタイトルのスペイン製幽霊映画を見る。監督はギレルモ・デル・トロ。これは拾い物。夜は 『レジェンド・オブ・サンダー』 という相当にとんちんかんな邦題がついたイギリス製のテレビ映画を見る。ジェームズ一世時代の火薬陰謀事件の話である。それがなぜレジェンド・オブ・サンダーになるのだろうか。 2004.12.12 sun. 雨のち曇り。大蟻食は引き続き風邪。わたしも風邪。『ケロロ軍曹』を9巻まで読み、 森見登美彦『四畳半神話大系』(太田出版)を読む。 これは傑作であろう。紹介文を 「本棚の一角」に追加した。 2004.12.13 mon. 晴れ。大蟻食は引き続き風邪。わたしも引き続き風邪。ビデオで 『デザート・オブ・ファイアー』と 『キングスパイダー』 を見る。前者はイタリア・フランス・ドイツ合作のテレビ・ミニシリーズ。後者はアメリカの(たぶん)自主製作映画である。 2004.12.14 tue. 晴れ。大蟻食もわたしも引き続き風邪。熱が抜けなくてだるくて喉が痛い。というわけで大蟻食は布団をかぶってトマス・ベルンハルトを読み耽り、わたしもまた布団をかぶってトマス・ベルンハルトを読み耽り、つまり大蟻食とわたしは枕を並べて日中そろってトマス・ベルンハルトを読み耽り、夜になってからマッシュルームのピラフ(布団から這い出て大蟻食が作った)とスペイン風の野菜スープ(布団から這い出てわたしが作った)を食べながら 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』 を見る。マカロニだと聞いていたのでなんとなく サバタ を期待してたんだけど、そういうことにはなってなかった。 2004.12.15 wed. 最近、いろいろと近辺の情報を寄せてくださる方があって、その情報を頼りに「ヴォルテール・ピープルズ」へ行く。名前だけ聞くと何かの圧力団体みたいだけど、自由が丘のメープルストリートを突き当たるまでどんどん歩いていった右手(ファミリーマートの向かい)にあるパン屋さんである。ちょっとドイツ系。質実な感じで、少々考えすぎたような雰囲気があって、でも、チーズの扱いはうまいと思う。で、場所がほとんど九品仏だということに気がついて、浄真寺の境内をかすめて等々力通りに出て尾山台方向に少し歩き、同じように情報をいただいた「パーラーローレル」でケーキを買う。こちらも質実で素朴な感じで、ただ味に工夫が凝らされていて面白いと思う。カシスクリームをメレンゲでくるんだケーキが楽しい。ラムレーズン入りの変な名のサバラン、むやみと硬度が高いカスタードプディングなども気に入った。 2004.12.16 thu. ようやく思い出して「モンブラン」でクリスマスケーキの予約をする。シュトーレンはもう締め切りましたと言われてうなだれる。だから今年はショートケーキだけ。途中、ゲーム屋さんで予約しておいた『メタルギア・ソリッド3』を受け取って帰宅する。さっそくやってみたところ、オープニング・タイトルがほとんど 007 なのであった(ちなみにバックに流れる主題歌はほとんど 『ゴールドフィンガー』 で、歌手がシャーリー・バッシーの乗りで熱唱していて、これがなかなか聞けたりする)。舞台のほうはジャングルである。それも1964年の、ソ連国内のジャングルなのである。沼にはガビアルなんかが寝そべってるけど、ロシアの領土内にこんな場所はないと思う。それはそれとして序盤をざっとやってみたところ、敵の所在を教えてくれるソリトンレーダーがないのがかなり辛い。ただ、下生えの草やシダなどが全部ポリゴンで作ってあって、そこへ分け入っていくと草が動き、ヘビやカエルが動いても鳥が飛び立っても草が動き、銃撃で弾道が抜けるとぱっと弾ける、ナイフで切ると葉先が飛ぶ、という描写にはとにかく恐れ入った(もちろんムービーの話ではない)。そして食料はジャングルの自然物を採取するルールになっていて、ナイフなどを使ってヘビ、カエル、ワニ、魚、キノコや木の実などを採るのである。それで何が起こるかというと、つまりうちの大蟻食が敵の攻撃をものともせずに這いつくばってキノコを採り、ヘビを殺し、ワニを殺し、ムササビを殺し、木の実を落とし、蜂の巣を撃ち落とし、採ったものをいろいろと貯め込んでしまうのである。根っ子が狩猟採集民なのである。縄文人め、と罵ってやった。しかし、切り株の上や壁の裂け目の向こう側などで見かけるあの黄緑色のケロヨンはいったい何を意味しているか?(試しに撃ったらゲロゲロ鳴いた)。付録のピポザルも面白い。 2004.12.17 fri. 大蟻食は学校へ。わたしは一緒に出てゴンゾの家へ。お菓子を山ほどもらって帰宅する。 2004.12.18 sat. 大蟻食は学校へ。わたしは『メタルギア・ソリッド3』をちょっと進める。敵兵に一度も感づかれずに序盤をクリア。スペツナズの攻撃を退け、ワニのかぶり物を手に入れる。 2004.12.19 sun. 取り忘れたアイテム(かわいいアヒルさんの柄の迷彩服とか)がいくらかあることに気がついて、『メタルギア・ソリッド3』を4ステージ戻る。夜、中国成都の醸造公司、飲食公司が共同開発して中国商業部金賞(1990年)を受賞したという陳麻婆豆腐用シーズニングという液体(たしかピーコックで見つけた)を使用して大蟻食が麻婆豆腐を作る。直線的な辛さだけど、それなりにおいしいと思う。食べながら 『チキンラン』 を見始めたが、こういう情報量が多くて凝った造りの映像作品は食事しながら見るのには向いていない。 2004.12.21 tue. 晴れ。友人が遊びにきたので昼食は久しぶりにLe Bouillonへ。そのあとお茶をしにSt. Cristopher Gardenへ。はちみつはたまに買っていたけれど、ここでお茶をするのは初めてである。真面目できちんとしたお茶が出た。『メタルギア・ソリッド3』のほうはジ・エンド(やつは普段、死んでいる)との戦いが終わり、山岳要塞へ。ハインドを撃墜。ちなみに食料庫を爆破すると警備をしているロシア兵が「ひもじい」とか「腹減った」とかつぶやくようになり、殴るとすぐに気絶する。 2004.12.22 wed. 晴れ。夜、一人で六本木へ。宴会。 2004.12.23 thu. 晴れ。朝、大蟻食はバイオリンへ。昼、わたしは大蟻食に呼ばれて渋谷へ。マークシティのなかの西楼厨という中華でご飯を食べる。際立ったところはない反面、真面目な料理で好感が持てる。食事のあと、マークシティをはずれまで進んでLe Connaisseurへ。葉巻を吸って帰宅する。 2004.12.24 fri. 晴れ。モンブランでクリスマスのデコレーションケーキを受け取り、大蟻食と二人でぱくぱくと食べてしまう。『メタルギア・ソリッド3』は要塞に潜入し、見つかってぶち込まれ、裸の状態で脱獄し、脱出して装備を回復。 2004.12.25 sat. 晴れ。誕生日。夜、大蟻食と一緒にLe Bouillonへ。前菜はタマネギのフラン。フランというとカスタードのものだと決めつけていたので、これにはちょっと驚いた。タマネギのスープを裏ごしして、卵白でかためたような感じであろうか。繊細で美味。続いてフォアグラのソテー。見事な火の通し加減が優雅な苦味を生み出している。へたくそがやれば、これはただの焦げたフォアグラであろう。レンズ豆のソースも舌に心地よい。絶品。言葉を失って平らげた。魚はイトヨリのポワレ。皮はぱりぱりで肉はしっとり。ヴィネグレットソースの香りがとてもやさしい。絶妙である。肉料理は牛テールの赤ワイン煮。昨年のクリスマス・ディナーに登場したイベリゴ豚のローストにも驚かされたが、これもすごい。ポテト、ニンジン、セロリのピューレが添えてあって、ワインで煮込んだ牛テールとともに甘味と苦味の不可思議なハーモニーを作りだしている。これは舌によい刺激だ。デザートはチョコレートのテリーヌにバニラとチョコレートのアイスクリームを添えたもの。ここでもチョコレートの苦味とアイスクリーム、フランボワーズのソースの甘味がうまく調和してすばらしい。コースが実によくデザインされているのである。ここのシェフの作家性にはいつも驚嘆させられる。大蟻食と二人でうんうんとうなりながら料理をすっかり堪能し、ワインもおおむね一本空けて、帰宅してお茶をいれて葉巻を吸う。 2004.12.26 sun. 晴れ。スマトラ島沖地震(M8.9)。朝、大蟻食は教会へ。ミサのあと家まで歩いて帰る、というのでわたしも等々力通りを西へ進んで大蟻食を尾山台で出迎える。家へ戻る途中、「ジャスト・ピクルズ」へ。近所の方に教えていただいたピクルスの店である。ドライトマト、オリーブ、ペコロスのピクルス、白ワインビネガーの炭酸飲料、赤ワインビネガーの炭酸飲料を買い求める。ピクルスはどれもとてもおいしい。赤ワインビネガーの飲み物はちょっと重い。 夜、『メタルギア・ソリッド3』をクリア。最終ボス戦はけっこう泣いたが、いよいよエンディング、というところで大人の男女が暖炉の前でくんずほぐれつという描写が現われ、プレイステーション用ソフトのムービーでこういう場面を見ることになるとは思っていなかったので(というか、そもそも描写が全体におとな向けであったものの)、いささか驚いた。ともあれ、文句なしの傑作である。プレイボリュームはたっぷりしていて(つまりいちおうはクリアしたが、できることのまだ半分もやっていない)、だから費用対効果に優れていて、グラフィックは美しく、システムはよく考慮され、洗練されている。キャラクターはどれもそれなりにうまく作られていて(ヴォルギン大佐の異常ぶりもなかなかだったし、若きオセロットのばかばかしさは最高であった)、ムービーも見ごたえがあり、終盤、サイドカーのチェイス場面などは涙もののアクション映像で、しかもムービーではないのである。最後のボスが怪人や怪ロボットや怪物のたぐいではなくて、ちょっとシャーロット・ランプリング系の美貌をした五十歳前後の怖いおばさん、というのもなんだかよろしい。これでわけのわからない上に無責任この上ない謀略史観型ストーリーがなければもっとよいと思うのである。 2004.12.29 wed. 雪のち雨。午後、大蟻食と一緒に雪のなかをゴンゾの家へ。到着した頃には雨に変わっていた。ゴンゾを撫でて、お餅をもらって帰宅する。 2004.12.30 thu. 晴れ。午後、大蟻食と一緒に渋谷へ出る。Le Connaisseurでデミタス・サイズの葉巻を少し買い、それからわたしは大蟻食と別れて渋東シネタワーへ。 『エイリアンVS.プレデター』 を見る。3割りほどの入り。見終わったあと、渋谷駅の地下で食料などを買い物をして帰宅する。FOODSHOWはさながら戦場であった。 2004.12.31 fri. 雪のち曇り。午前中、雪のなかを買い出し。昼過ぎにはほとんど吹雪いているような状態だったので、大晦日の映画鑑賞は中止して(『ハウル』をもう一度見ようと考えていた)、家で雪景色を眺めながら葉巻を吸う。夜は白菜と肉団子の煮込み。それを食べながら 『クリムゾン・リバー2』 を見る。テンポが早くてだれ場がないので、それなりに見ていられる。食事のあとでモンブランのケーキを食べて、テレビでジルベスター・コンサートの中継を見て、新年になったところで寝てしまう。 |