2003.01.01 wed.
朝起きてお雑煮を食べる。ゴンゾの家と大蟻食の実家へ電話を入れて挨拶をして、コーヒーを飲みながら年賀状を見て、大蟻食はバイオリンのお稽古、わたしは自分の部屋でクライブ・バーカーの「アバラット」(ソニーマガジンズ)を読み始める。まだなんだかよくわからないけれど、絵はすごい。それと、年が明けてから思い出したことがひとつ。実は前日、吉川英治の「宮本武蔵」を読み終えていたのである。いやいや、いろいろと勉強になった。

2003.01.02 thu.
「アバラット」第一巻を読み終える。「ONE PEACE」のグランドラインを思わせる群島世界で善と悪が灰色の領域に浸っている。そのあたりの割り切れなさは非常によろしいのではないかと思う。登場人物は多くが妄念のとりこで、だからいかにもクライブ・バーカー流に立っているし、ビジュアル・イメージはほとんどホラーで、かなり気味が悪い。そしてそうしたイメージを補う挿絵は当然のことながらグロテスクなので、もしわたしがこどもだったらいくつかのページは二度と開けないと思うのである。1巻目は人物と状況の紹介、対立関係の説明でおしまい。展開は2巻目以降になるのであろう。あと、残念なことではあるが、いささか時代小説色を強調した訳が不自然に見えてよろしくない。

2003.01.03 fri.
昼前から雪。大蟻食と一緒に浜離宮へ。放鷹術の実演を見物するためである。現地へ到着してみると雪がけっこうな降りになっていて、風があるのでとても寒い。それにもかかわらず会場には少なからぬ数の人が集まっている。震えながら待っていると実演が始まって、往時の装束にならった鷹匠たちが鷹を腕に止めて現われて、腕から腕へ、あるいは木の枝へと鷹を巧みに飛び回らせる。いささか遠目にではあったが、やはり鷹が飛ぶ姿は美しい。最後に隣にある電通ビルの屋上から浜離宮の会場まで隼が急降下する。とてつもない速度で斜めに飛び込んできて、生餌を空中で確保した。なかなか見られない光景である。

2003.01.04 sat.
晴れ。午前中、買い物をするために二子玉川へ。駅の周辺も玉川高島屋もそれなりの人出。午後はゴンゾの家へ。香琳(姪、一歳)と久々に顔を合わせる。もうちゃんと歩けるようになっていて、いろんな物に関心を示してころころと笑う。しばらく前までは泣いてばかりいたのが嘘のようである。香琳が場をさらってしまうので、ゴンゾは面白くないのであろう。すぐに姿を消してしまう。最後に様子を見に行ったら、寝台の上で丸くなって眠っていた。

2003.01.05 sun.
当分はしないつもりだった「メタルギア・ソリッド2 サブスタンス」を始めてしまう。でも、なんだかちょっと難易度が高いぞ。

2003.01.06 mon.
勇斗(甥、六歳)と葉月(姪、三歳)がお母さんと一緒にやってくる。葉月はちょっぴりおしゃまさん。お茶の後、わたしは勇斗と一緒に「クラッシュ・バンディクー・レーシング」の「みんなでバトル」。カートに乗ってステージを走り回りながら、爆弾やミサイルをぶつけ合うのである。勇斗の勝ち。夕食は大蟻食の中華料理。

2003.01.07 tue.
朝食の後、また勇斗と一緒に「クラッシュ・バンディクー・レーシング」の「みんなでバトル」。今度はわたしの勝ち。大人気ない、と大蟻食に叱られた。午後、大蟻食と一緒に新宿へ。勇斗たちを見送る。

2003.01.12 sun.
昼過ぎ、大蟻食と一緒に新宿へ。歌声喫茶「ともしび」で井上徹さん、高野史緒さんの結婚を祝う会。盛況であった。井上さん、高野さん、お幸せに。なお、大蟻食もわたしも歌声喫茶に入るのはこれが初めてであった。

2003.01.15 wed.
「新鋭艦長、戦乱の海へ」(パトリック・オブライアン、早川文庫NV)を読み終える。19世紀初頭の英国海軍を舞台にしたシリーズで、全部で20巻あるらしい。主人公のジャック・オーブリーはホレイショ・ホーンブロワーとは違って上流階級に縁故があって、その恩恵をどうやら多少は受けている。太っていて、享楽的で、艦尾甲板に立ってヴァイオリンを弾いたりするあたりもホーンブロワーとだいぶ違う。で、そのジャック・オーブリーがちっぽけなスループ艦の指揮官に任命されてフランスの商船を拿捕したり要塞を破壊したり、大胆不敵にもフリゲート艦を切り込みをかけたりするのである。際立った特徴は作者自身が前書きで断っているように、多くの部分が当時に関わる資料からの引用を元に成り立っていることで、つまりどちらかと言えば記録の断片化と再構築が主要な意図になっていて、だから小説としての水準は必ずしも重要視されていない。だからいろいろと珍しい場面が再現されていて、それはそれで興味を引かれるけれど、読むのはかなりの骨であった。こういうことなら小説としてではなくて、ただ薀蓄本として書いてくれた方がこちらも時間を節約できる。巻が進むと改善されるのだろうか?

2003.01.18 sat.
大蟻食と一緒にビデオで 「ノー・マンズ・ランド」 を見る。これが今年最初の映画。

2003.01.19 sun.
夕方から雨。気温はそう低くはないけれど、なんとなく寒い。というわけで大蟻食と一緒に 妻家房 へ。マッコリ、チャンジャ、サラダ、ドッポッキ、コッチャンチョンゴル。チャンジャという鱈の塩辛は初めて食べたけど、生臭さがまったくない。最後にコッチャンチョンゴルの残りをおじやにしてもらって、すっかり温まって帰宅する。

2003.01.25 sat.
大蟻食は学校へ。わたしはお茶をいれて、一人で 「ゴースト・オブ・マーズ」「セッション9」 を見る。夕方、大蟻食が戻ってきたので久々に洋食屋さんのブラームスで食事。ハヤシライス、エビフライ。帰宅したら 松柏社 からアメリカ古典小説コレクション1「ベン・ハー」(ルー・ウォーレス、辻本庸子/武田貴子訳)が届いていた(ありがとうございます!)。お風呂に入って、お茶を入れて、今度は 「バイオハザード」。 ちなみにゲームの方はおっかないのと難易度が高いのとで、最初のやつの最初のあたりで投げ出している。

2003.01.26 sun.
「ベン・ハー」を読み始める。白状すると小説の方はこれが初めて。昼過ぎ、大蟻食が聖歌隊の打ち合わせを終えておなかを空かせて戻ってきたので妻家房へ。夜は手巻き寿司。お茶を入れて一緒に 「ル・ブレ」 を見る。

2003.01.27 mon.
「ベン・ハー」を読み終える。 59年の映画 でしか知らなかったわたしには原作の後半における展開は驚きであった。ユダヤに戻ってきた後、ベン・ハーはガリラヤ人を軍隊に組織して、イエス・キリストを王に抱いて独立戦争をしようと企んでいたのである。描写は全体にエキゾティック、話者の存在を明示する大衆文学的な手法は今読むとかえって新鮮なおもむきがある。

2003.01.28 tue.
「人類はなぜUFOと遭遇するのか」(カーティス・ピープルズ、皆神龍太郎訳、文春文庫)を読み終える。いわゆるケネス・アーノルド事件を皮切りに、それから半世紀にわたってアメリカでどのようにUFO神話が形成されたかを真面目に解説しようという試みで、著者は航空史の専門家のようだが、取り組み方は社会史に近くて政治的には中庸である。アブダクションやミューティレーション、MJ12やロズウェル事件といった現象だの陰謀だのが生まれてきた過程が説明されていて、発生の順序からすると、一種の集団ヒステリーの上に極左的な、あるいは反ユダヤ的な謀略史観が乗っかっているということになるらしい。そのまま読むと20世紀後半におけるアメリカの病的な精神史ということになるのだけど、それがUFOというサブカルチャーを軸に構築されてしまうあたりがこの国の奇妙なところであろう。本書では神話の構築と再構築のプロセスは明かされているが、プロセスの動作を保証している詐欺師の数や増殖する虚言癖、多くの信じやすい人々の存在が何に由来するのかは説明されていない。事前の了解として遍在するかのごときおもむきがあった。そのあたりの解明は心性史の仕事になるのであろう。
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