2003.04.04 fri. 朝から外出していたら、夕方になってなんとなく風邪っぽい。心配しながら帰宅して、ワインを飲んで寝てしまう。 2003.04.05 sat. 終日、雨。風が強い。昼前、大蟻食と一緒に渋谷へ出て、渋東シネタワーで 「デアデビル」 を見る。初日の2回目、12時の回で客の入りは2割未満。内容が地味すぎるのか。映画の後、久しぶりにロゴスキーで食事をして、寒いのですぐに帰宅する。 2003.04.06 sun. 晴れ。陽射しは暖かいけれど、風が冷たい。大蟻食と一緒に近所のイタリア料理店へ。"J1"という変わった名前で、ずいぶん前にできた筈の店だけど、行くのは初めて。開拓を怠っているので、そういう店が多いと思う。ランチのコースは満足できる内容だった。買い物をして帰宅する。 2003.04.07 mon. 風邪引いた。 2003.04.08 tue. ちょっと辛い。 2003.04.09 wed. 熱が出てきたので、かかりつけの内科へ。帰宅して、横たわってエミール・ゾラ「パリの胃袋」(朝比奈弘治訳、藤原書店)を読み終える。パリ中央市場の話である。 青年フロランは弟を養うために学業を捨てて教師となって働いていたが、ナポレオン三世のクーデターの際に無実の罪で逮捕されて仏領ギニアへ流される。それから7年、悪魔島からの脱出を果たしたフロランは困難を乗り越えてフランスへ戻り、行き倒れ同然の有様となってパリ中央市場に辿り着く。だが暮らしていた家はすでになく、弟は叔父のシャルキュトリを受け継いで総菜屋として成功していた上に、結婚してこどもまでもうけていた。弟は兄の帰還を喜んで進んで家へ迎え入れるが、近所でも評判の美人妻リザにはこれが面白くない。フロランが痩せこけていて陰気だったからであり、対するリザはこれみよがしに脂が乗っていて、どこもかしこもむっちりとしていた。やがてフロランは中央市場に職を得るが、かつてのリベラル仲間と旧交を温めていくうちに社会主義の理想に目覚め、カフェの奥にあった小さくて崇高なサークルを恐るべき革命計画へと導いていく、といったような展開になっているが、登場人物に注がれていた語り手の視点がわずかでもずれると、視界に飛び込んでくるのは食物の山また山という仕掛けになっていて、つまり主役はあくまでもパリの中央市場なのである。取材をベースにした濃密な再現描写をこの奇妙に移り気な視線が物語にうまく融合させていて、下手にやればただ浮き上がるだけのものに対して現実的な色彩を与えることに成功している。早い話、市場の露台とはしばしば目を奪うものなのである。そういうカラフルな場所を禁欲的で痩せこけていて胃が弱いフロランがうろついていると、でっぷり太った美人の群れがが肉を切ったり魚を切ったり野菜を並べたりしているという構図は、かなりの悪意に満ちていた。題名(原題は「パリの腹」)が示しているように主題はよく身についた脂であり、その脂を持つ者と持たない者との対立であり、劇中クロード・ランチエが断言しているように、それはデブとヤセの戦争なのである。絶対の平穏を体現して丸々と立つリザの迫力がすさまじい。面白かった。 2003.04.10 thu. 前夜から、眠りに落ちるごとに悪夢に襲われている。パリ中央市場には隠しダンジョンがあって、そこでは美人で丸々と太った魚屋の女とかが、あっちに一人、こっちに二人と潜んでいるのである。遭遇すると必ずパズルのようなミニゲームが始まって、これに勝たないと熱が下がらないということをわたしは知っている。 2003.04.11 fri. 熱が下がらない。医師が抗生物質を変更する。細かい字が読みづらくなったので、諸星大二郎の「栞と紙魚」シリーズ(朝日ソノラマ)を前から順番に読み始めた。4冊全部を読み終えたところで精神状態が悪くなった。病気の時に諸星大二郎を読んではいけない。 2003.04.12 sat. 午後になって発汗が始まり、熱が下がる。下がり方が緩慢で、ちょっと苛立つ。読み物は星野之宣の「宗像教授伝奇考」(潮出版社)に。 2003.04.13 sun. 夜7時から、大蟻食と一緒にNHK教育で「サンダーバード」を見る。見終わった後、大蟻食に向かって薀蓄しまくっていたら、咳が出てきた。 2003.04.14 mon. 医師が不審を抱いている。本当ならば前夜までに平熱に戻っていなければいけないと言う。そうかもしれないが、でも、そうだとしてもわたしのせいじゃない。 あと、ちょっと遅くなってしまいましたが、いちおうお知らせしておきます。大蟻食の短編「花嫁」が別冊文藝春秋の5月号に掲載されています。「天使」の姉妹編で、ジェルジュの父親の若い頃の話になっています。 2003.04.16 wed. 数日分の検温記録をプリントアウトして病院へ。目にも明らかなグラフの下降線を見て医師も納得してくれた。ゆっくりとだけど、とにかく下がってはいるのである。 2003.04.18 fri. ビデオで 「エクスカリバー」 とかいうのを見る。いわゆる 「エクスカリバー」 とはあまり関係がなくて、アンソニー・ヒコックスの冗談みたいな映画である。 2003.04.19 sat. 南の風。曇り。今度は大蟻食が病気になる。つらそう。つらいと言って横たわっているので、わたしも隣で横になってマイケル・クライトンの「プレイ -獲物-」(酒井昭伸訳、早川書房)を読み終える。ああいうことになっても認知は断絶しないと確信できるあたり(そもそも疑わない)が、マイケル・クライトンの強みでもあり弱みでもあり、楽観的なところでもあって、物足りないと思う一方、決して嫌いではなかったりするのである。とはいえ、ナノマシン、などといいながら結局はバイオなのであった。そういうことならグレッグ・ベア「ブラッド・ミュージック」の勝ちではあるまいか。あっちはまじで気味が悪いし恐ろしいし。 夕方から雨。6時頃、外へ出たら東の空に大きな虹。7階のベランダから確認した大蟻食の話では、虹は二重になっていたらしい。陽が沈むにつれて北東の方角へ消えていったという。見えていたのは10分ほどか。 夜、病気の筈の大蟻食と一緒にお茶を飲みながら 「ダーク・ブルー」と 「9デイズ」 を鑑賞する。 2003.04.20 sun. 雨。頭痛の原因は低気圧であろう。大蟻食は少し回復。刺激のあるものが食べたいと言うのでお昼は妻家房へ。量は控えめにしていろいろと食べる。午後は二人とも寝て過ごし、夕方になってから一緒に買い物へ。なぜだかもたもたしていて、そうしているうちに「サンダーバード」を見そこねた。遅めの夕食を食べながら、エミル・クストリッツァの 「SUPER 8」 を見る。劇映画の新作はどうなっているのか? 2003.04.21 mon. 午後から晴れ。強い北の風。この二日ばかりでワイルドストロベリーが急成長。夕方、大蟻食は学校へ。遅く戻る。お茶をいれて、夜食がわりにケーキを食べて、並んで 「スパイキッズ2」 を見る。3は3Dって、ほんとかな? 2003.04.23 wed. ぐずついた天気が続いている。あいかわらず頭が痛い。 2003.04.24 thu. なんとなく歩いていたら住居表示板の支柱に真正面からぶつかっていって額を打った。こういうことがたまにある。 2003.04.25 fri. 曇り。時々雨がぱらついている。昼前に大蟻食と一緒に渋谷へ出て、友人と待ち合わせてロゴスキーで食事。食事の後はお茶。夕刻前にわかれて、大蟻食とわたしは 「略奪者」 の試写会へ。 2003.04.26 sat. 朝のうち曇り。昼から晴れ。天気予報のとおりに蒸し暑い。大蟻食は朝から学校へ。夕刻、大蟻食を駅まで出迎えて一緒に買い物。晩ご飯はスパゲッティ2種(ペペロンチーニと娼婦のスパゲティ)とアスパラガス。食べながら 「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」 を見る。 2003.04.27 sun. 朝のうち曇り。間もなく晴れ。陽射しが強いが、風は冷たい。昼前に大蟻食と一緒に散歩に出て、スペイン料理の店で昼食。オムレツのほかにタパスを5皿とサングリア。かなり満足。無印に寄って帰宅する。夕食はベトナム料理店へ。夜は一人で 「ハリケーン・コースト」 とかいうのを見る。巨大な嵐が西海岸に接近するけど、予算の関係で上陸はしない。 2003.04.28 mon. 晴れ。伊坂幸太郎「重力ピエロ」(新潮社)を読み終える。このように刺激的な文学テクストがあるというのはありがたいことだと思う。夜、大蟻食が仕事場にもぐり込んでしまったので、一人で 「タワー・オブ・タイタンズ」、 「ラスト・キャッスル」 と続けて見る。 |