2000.11.02 thu.
はやいもので、もう11月である。来月にはわたしは40になる。ギリシア風に言えば人生の盛りの時期ということになるが、盛っているのかどうか、今一つ確信が持てない。どちらかと言えば下がり調子なような気もする。しかし、気にしても仕方がないので居直ることにした。 2000.11.03 fri.
沢村凛さんが広島風お好み焼きとワインを持って我が家へ来る。お好み焼きを食べてワインを飲むという趣向だが、それだけではこちらで何も用意しないということになってしまうので、環八方面のスーパーへ走って生ハムとイチジクを購入する。日頃からの軽薄が災いしてラングドックの21世紀記念ワイン(メルロー)なるものも衝動買いする。いったん家に戻って今度は自由ケ丘方面へ進出し、モンブランでケーキを購入する。3人だから3の倍数個という漠然とした考えで店に入って、出てきたら9個買っていた。昼過ぎ、沢村さんが自由が丘駅に到着。我が家に案内する。ぬいぐるみが平然と徘徊している我が家の現状を沢村さんは冷静に受け止めていたようである。お好み焼きはなかなかのものであった。沢村さんから中南米での旅行について、いろいろと興味深い話を聞いた。 2000.11.04 sat.
3日ほど前から耳の奥がごろごろするので耳鼻咽喉科で診てもらったら滲出性中耳炎だと言われた。鼻から空気を吹き込んで耳の底にたまった水を散らしてもらう。 2000.11.05 sun.
起きたらもう昼になっていた。日曜日はこういうことが多い。適当に朝食を済ませて散歩する。いつも行くコーヒー専門店のテラスの席に先客がいるので、時間潰しに最寄りのブティックに潜り込み、気がついたらコートを買っていた。敵は商売がうまいのだ。ボタンではなくジップアップになっていて、形はほとんどスター・トレックである。 2000.11.10 fri.
ゾラの「制作」を読み始めているが、予想に反して少々つらい。読みにくいのである。ゾラってこうだっけ、と思って試みに「ジェルミナール」を引っ張り出して読んでみたが、こちらは読みやすいし面白い。どうもこれは「制作」の方に問題があるようだ。大蟻食の見解では本物の「芸術小説」だからではないか、ということだが、そういうことかもしれない。主人公が抱え込んでいる「芸術的」な足踏みが小説の展開を阻んでいるのだ。 2000.11.11 sat.
無気力病にかかり、日中は和田慎二「少女鮫」を読んで過ごす。相変わらずの死体の山なのである。なんでこうなるんだろう。夕方、無気力病ではあったが、なんとか身体を起こして渋谷へ出て、シネフロントで
「インビシブル」を見る。ポール・バーホーヴェンのおかげで少し元気になった。夜は大蟻食と一緒に「アリー・マイ・ラブ2」の8巻9巻を続けて見て、その後、NHKで「アリー・マイ・ラブ3」をやっていたのでそれをちらっと見て、寝てしまう。ビリー・トーマスは性格にかなり問題があるぞ。
2000.11.12 sun.
変わらずに無気力病である。というわけでへたっていた。夜、ビデオで
「ボーン・コレクター」を見る。暗い(明るいわけないが)。
2000.11.19 sun.
無気力病ではなく風邪なのであった。熱は出ない代わりに異常に虚脱感の強い風邪が流行っている模様である。 2000.11.22 wed
夜、大蟻食と一緒にビデオでポランスキーの
「ナインスゲート」
を見る。悪くない。
2000.11.23 thu.
勤労感謝の日である。自分の日頃の勤労に感謝して寝て暮らす。夜になってからテレビ東京の三時間番組「日本のタクシーが行く、東京-ロンドン2万キロ」とかいうのを最初から最後まで見る。タクシーの運転手に転職した水道屋の親子が喧嘩をしながらユーラシア大陸を駆け抜けていた。最後のロンドン到着の場面で一群のロンドン・タクシーがライトを明滅させて迎えるところで図らずも感動してしまった。どうも、こういうのは駄目なのである。年のせいなのか、感動しやすくてちょっと困っている。
2000.11.24 fri.
こともなし。大蟻食は午後から銀座方面へ。高野文緒氏とおしゃべりをして夜、帰宅。
2000.11.25 sat.
例によって日中は散歩。天気がいいので人出がすごい。歩いているうちに夕食には水餃子を食べることになり、さらに明日の夜はポトフを食べようという話になって、すね肉が手に入るピーコックへ。ピーコックでは出張販売でいわしのつみれを売っていたので、明日の昼食のメニューが自動的に決定する。つみれを入れたうどんである。これで翌日の夕食までのメニューが全部決まったことになるが、こういうことは珍しい。ちなみにここのところ、朝はホットケーキと洋梨を食べている。夜になってからフジテレビで「中国からの贈り物・・・第2夜 若者たち」を見る。前に放映された「小さな留学生」も中国人の生態を観察する上でなかなかに面白かったが、今回はそれ以上に楽しめた。若者の一方というのが地方幹部の伜で、苦労知らずだったからである。日本にやってきて「社会主義体制」における人民の生活をやっと垣間見たという感じなのではあるまいか。相当なカルチャー・ショックだったろうね。途中でかなり妙な雰囲気になっていたので心配したが、ちゃんと明治大学に入学できたのでほっとした(でも面接にダブルのスーツを着るのはどうかと思うぞ。顔のそばかすは直ったかい?)。もう一人の19歳の女の子には感心した。語学学校に1年通っただけで千葉大の工学部だからね。二浪のわたしは思わず俯いてしまった。
2000.11.26 sun. エリック・ラーソン「1900年のハリケーン(文春文庫)」を読み終える。仕上がりそのものにはそれほど感心しなかったが、それでも今世紀初頭(というか前世紀末)の天気予報の様子を知ることができて興味深い内容であった。これで妙にもったいぶらずにストレートに事実を並べてくれていれば随分といい本になっていたのではないかと思うのだが、どんなものだろう。おそらくは悪い意味でのジャーナリスティックな姿勢が先行していて、その結果としてデータを伝えるという行為が欠落している。だからハリケーンに襲われて六千人の犠牲者を出すガルヴェストンの人口がなぜだか最後までわからない、といったような事態が発生する。人口に関する言及が文中で二度あるにもかかわらず、である。昼過ぎ、大蟻食がネギを買いに出るという。前日に買ったネギは全部ポトフの材料になって煮込まれてしまったので、うどんに入れるネギがないのである。というわけで二人でネギを買いに行く。実を言うと、大蟻食もわたしも格別うどんが好きなわけではない。しかしピーコックと東急ストアに交互に出現するいわしのつみれの出張販売を見かけると、その日かその翌日はうどんになる。なかなかにうまいのである。ネギを買って家に戻ってうどんを食べて、それから大蟻食はボウイングの練習にとりかかる。夕方、大蟻食は音楽教室の演奏会へ。わたしは駅まで見送りに出て、帰路、唐沢なをき「カスミ伝△(講談社)」を購入する。相変わらずの「実験しまくり」である。 |