キング・アーサー
- Aloysius' Rating: 4/10
2004年 アメリカ 126分
監督:アントワーン・フークア
出演:クライヴ・オーウェン、キーラ・ナイトレイ、ヨアン・グリフィズ


駄作。四世紀ごろのブリタニア。なんだか 『キングコング』 を恐れて作ったようなやたらと高いハドリアヌス帝の城壁の向こうはサクソン人の侵攻を受け、取り残されたローマ人の一家が危険にさらされていた。そこでローマ・ブリタニア混血のアーサーが率いるサルマティア騎兵の一団が救出のために派遣される。本来、救出の対象となっていたのは法皇の名付け子一人のみであったが、自由と平等を叫ぶアーサーはブリタニア人の農民が放置されるのを看過できず、全員救出を選択する。いや、つまり、アントワーン・フークア監督の前作、つまりブルース・ウィリス扮する特殊部隊の隊長が少数の部下を率いてナイジェリア奥地へアメリカ人を救出に行く 『ティアーズ・オブ・サン』 とほとんど同じプロットなのである。驚いた。
帝政ローマ時代を背景にしたアーサー王物語という着想自体、まったく理解できないわけではないし、アーサーがローマ人ならランスロットやガラハッドがサルマティア人でも別にかまわないと思うけれど、そのアーサーは壊れた鸚鵡のように「自由、平等」と叫び続けるし、マーリンもグエネヴィアも民族の自決しか気にしてないし、おまけにサクソン人までが愛国心を鼓舞するためなのか、前進しながら「サクソン、サクソン」と叫ぶという単細胞で相続力が乏しくて硬直しただけのメッセージにまみれた有様は見ているこちらに昭和43年の松竹映画 『昆虫大戦争』 を思い出させた。アントワーン・フークアの演出はこれまでの作品と同様、即興的で思慮が感じられない。キーラ・ナイトレイの顔を青く塗ったグエネヴィアはいいとしても、クライヴ・オーウェンのアーサーはほとんど悪夢のようであった。 『すべては愛のために』 という凡作を見た時にも思ったけれど、普通の観客がこのひどく景気の悪い顔をした鈍重そうな男を我慢できるとは思えないのである。視覚的にも失敗が目立つ。戦闘シーンはリアリティに乏しいし、アーサーその他の連中の甲冑も奇妙なだけで面白くない。

IMDb IMDb で  を検索します。
* Search provided by The Internet Movie Database.