戦艦バウンティ号の反乱
- Aloysius' Rating: 5/10
1935年 アメリカ 132分
監督:フランク・ロイド
出演:チャールズ・ロートン、クラーク・ゲイブル、フランコット・トーン、ハーバート・ムンディン


18世紀末。英国海軍軍艦バウンティ号はタヒチ島に産するパンの木を西インド諸島へ移植するという実験的な任務を帯びて南太平洋へ赴くが、タヒチから出港した後、航海士フレッチャー・クリスチャンを中心とする反乱が起こり、艦長ウィリアム・ブライはボートで洋上に追放され、バウンティ号を奪ったクリスチャンはタヒチを目指す。ブライ艦長は定員超過のボートによる大胆不敵な冒険航海を経て生還を果たし、報告を受けた英国海軍は反乱討伐のためにフリゲート艦パンドラ号を派遣する。だがバウンティ号及びクリスチャン航海士を捕捉することはできなかった。バウンティ号の反乱者たちは絶海の孤島ピトケアンに逃れたとされている。
以上は映画のストーリーではなくて、おおむねのところの史実である。ちなみにバウンティ号は「戦艦」ではなくて砲4門を搭載した等級外の小型艦で、ウィリアム・ブライは正規艦長(Post Captain)ではなくて艦長名簿に載っていない海尉艦長(Commanding Lieutenant)であり、陰険な初老の男ではなくて半額休職給から抜け出してきたばかりの33歳の青年である。
で、自由を渇望する反乱の首謀者フレッチャー・クリスチャンがクラーク・ゲイブル、陰険な初老の男ブライ艦長がチャールズ・ロートン。このブライ艦長は初めから悪役として作られているし、対するクリスチャン航海士の方は驚いたことに最初から反乱を企んでいるように見える。時間を節約するためかもしれないが、準士官に過ぎない航海士が艦長に対してまるで敬意を払っていない、それどころか対等者のように振舞っているというのはやはり妙に見えるし、解釈の仕方によっては開巻からわずか30分で二度反乱を起こしていると言えなくもなくて、いや、製作当時のアメリカ海軍だって、あんな無礼は許されなかったであろう。対立関係が極端に単純化されたせいで、この映画のバウンティ号はそもそもの最初から軍艦に見えなくなってしまっている。ブライ艦長の根拠のない暴虐はほとんどナンセンスの粋に踏み込んでいるため、反乱に至るまでの前半はまるでコメディである。対するクリスチャンはまったく抑圧を欠いたままブライの行動に反応しているだけで、つまるところこの映画における「反乱」とは、漫才のコンビが途中でコンビを解消しているという以上の意味はない。掘り下げの浅い話を思いつきの演出でつなげただけの締りの乏しい映画であった。クラーク・ゲイブルの半裸姿を見せるための企画であろう。

なお、同一の歴史的素材を扱った作品に;
「戦艦バウンティ」「バウンティ/愛と反乱の航海」がある。

IMDb IMDb で  を検索します。
* Search provided by The Internet Movie Database.