地獄の天使
- Aloysius' Rating: 8/10
1930年 アメリカ 127分
監督:ハワード・ヒューズ
出演:ベン・ライオン、ジェームズ・ホール、ジーン・ハーロウ、ジョン・ダーロウ
ロイとモンティのラトリッジ兄弟はドイツ人のカール・アムシュタットとともにオックスフォードで学ぶ学生であったが、そこへ第一次世界大戦が勃発し、カールは祖国ドイツから召集を受け、まじめなロイ・ラトリッジは志願して飛行隊へ入隊し、享楽的なモンティ・ラトリッジもまた本意に反して志願することになり、兄と同じ飛行隊へ入隊する。訓練を終えたラトリッジ兄弟がフランスへの移動を待っていると、そこへツェッペリン飛行船がロンドン爆撃のために現われるので、兄弟は仲間とともに迎撃に飛び立つ。撤退に移ったツェッペリンは高度を確保するために余計なものを次々に捨て、捨てる物がなくなると乗員も捨てるが、英国軍機の体当たり攻撃で爆発炎上する。ラトリッジ兄弟は生きながらえてフランスの戦場へ渡り、そこでモンティ・ラトリッジは臆病者の嫌疑を受け、名誉を回復するために危険な任務に志願する。ロイ・ラトリッジもまた弟に続いて任務に志願し、二人は鹵獲品のゴータ爆撃機に乗り込んでドイツ軍の弾薬集積地を爆撃するが、帰路、ドイツ軍戦闘機の攻撃を受ける。
それぞれの仕方で恋をする青年たちが戦争に巻き込まれ、悲惨さがたれこめた戦場へ送られて命をすり減らしていくストーリーはセオリーどおりで破綻はない。登場人物の造形も単純ながらよく考慮されており、実直な兄、享楽的な弟、それに輪をかけて享楽的な娘(ジーン・ハーロウ)、英国への愛に悩むドイツ人青年、ステレオタイプの各種ドイツ人などが登場して飽きさせない。場面の構成はサイレントに近く、余計なダイアログよりも絵で多くを説明するため、結果としてきびきびとした動きになっている。ふつうの映画としても水準を十分にクリアしている作品だが、空戦シーンのものすごさは比類がない。英国機対ドイツ機の空中戦(しかも半端な数ではない)はすさまじいまでの迫力があり、しかも撮り方にとてつもないこだわりがある。たとえばリヒトフォーフェンの編隊がいったん散って主人公たちが乗るゴータ爆撃機を攻撃したあと、援軍として現われた英国の編隊とまみえるために空中で再集結するシーンなどは一瞬なのにぞくぞくしてくるほどすばらしいのである。きりもみ状態で地面へ突っ込んでいくゴータ爆撃機(MB-2の実機を使っている)もすごいし、さすがに本物ではないようだが、ツェッペリンの爆発シーンもものすごい。そのツェッペリンもただ飛んでいるだけではなくて、ブリッジの細部から偵察用ゴンドラとその周辺装置、エンジンなどがていねいに描写されているし、そのエンジン音を聞いて警報を鳴らすイギリス側の聴音装置なども登場する。空戦シーンでもどこに被弾したのか、どこに被弾したからどうなるのか、と実に細かく、さらにうれしいことに響いてくるエンジン音が実によくできている。いろいろと航空映画を見てきたけれど、これほどすごいのはたぶんほかにないと思う。こういうこだわりがやたらと見えるとどうしても点が甘くなるわけだけど、製作当時で製作費420万ドル、集めた実機が87機、それを飛ばしているのは第一次世界大戦中の本物のパイロット、
『アビエイター』
のなかの台詞によると空戦シーンで同時に使ったカメラが24台、というのはまったく無駄になっていない。
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