オリバー・ツイスト
- Aloysius' Rating: 6/10
2005年 イギリス・チェコ・フランス・イタリア 130分
監督:ロマン・ポランスキー
出演:バーニー・クラーク、ベン・キングズレー、ハリー・イーデン、ジェイミー・フォアマン、エドワード・ハードウィック、リアン・ロウ、ターボ
もともと非常にバランスの悪い原作からエピソードを刈り込み、登場人物を刈り込まなければならないので、『オリバー・ツイスト』の映画化では脚本の出来不出来がものを言う。残念ながらこのポランスキー版は必ずしも脚本に恵まれていない。サイクスが狙いを付けた家がなぜかブラウンロー氏の家に変えられているが、そうなるとモンクスをストーリーから排除した理由がわからなくなるし、ドジャーになんでもやらせてしまうのはいつものことだとしても、今回はその処理のまずさがあってドジャーとナンシーの関係が不明瞭になり、チャーリー・ベイツ対サイクスのエピソードまでドジャーに割り振ってしまった結果、ますますドジャーのキャラクターが不鮮明になっている。サイクス、ナンシーの書き込みにも甘さが見える。演技陣にも疑問がある。ベン・キングズレーはフェイギンを熱演しているが、アレック・ギネスのコピーのように感じられた。いっそアラン・リックマンあたりがやっていれば、もっと面白くなったのではあるまいか。バーニー・クラークのオリバーは少しばかりふてぶてしくて、言うほど無垢には見えてこない。むしろ、どこかに二心を感じさせた(あの眼鏡はなに?)。出演者は総じて魅力に乏しい(ブルズ・アイに扮したターボはよかったが)。あえて文芸路線に踏み込み、原作から細部を取り込もうとした勇気は認めなければならないが、この素材はやはり芸達者をほどよく配して演芸会にすべきではなかったか。ロンドンの街頭の雑踏からリトル・サフラン・ヒルへといたる道筋では
『戦場のピアニスト』
のゲットーを彷彿とさせるパノラマ的な描写がおこなわれ、そこに繰り広げられる景観は楽しいものの、演出自体は必ずしも成功していない。オリバーを手前に置いたために、背景に対してカメラが引きすぎたせいであろう。非常に美しい映画ではあるが、デザイン上の失策が目立つ。ついでながら、後段でバンブル夫妻が登場しないのは、約束違反ではないだろうか。
デヴィッド・リーン版
には及ばない。
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