PLANET OF THE APES/猿の惑星
- Aloysius' Rating: 7/10
Planet of the Apes (USA 2001) Directed by Tim Burton Written by William Broyles Jr. (novel:Pierre Boulle) Cast: Mark Wahlberg,Tim Roth,Helena Bonham Carter,Michael Clarke Duncan,Kris Kristofferson ,Estella Warren,Paul Giamatti,Cary-Hiroyuki Tagawa,Erick Avari,Luke Eberl ,Evan Dexter Parke,Freda Foh Shen,David Warner,Glenn Shadix,Lisa Marie

宇宙空間のどこぞを航行中の宇宙船が磁気嵐に遭遇し、調査のためにポッドにチンパンジーを搭載して送り込むと行方不明になってしまう。そこでマーク・ウォルバーグ扮する大尉が別のポッドに乗り込んで後を追うが、時空を超えてどこぞの惑星に不時着する。 で、68年版「猿の惑星」 とはだいぶ違っていた。実は見る前から、最初に消えてしまうチンパンジーの名前が気になっていたのである。そして見終わってから、大蟻食からこれはシェイクスピア芝居だという指摘を聞き、シェイクスピアに「ペリクリーズ」という題名のロマンスがあることも聞いて納得した。つまりあくまでもペリクリーズであって、ペリクレスではなかったということだ。たしかにペリクレスはお猿の名前ではないだろう。ただ、旧作シリーズでは途中からシーザーという名前の猿が登場していたので、その関係で多少の不安を感じていたのかもしれない。シーザーならともかく、ペリクレスだと話が得体の知れないことになりかねないからである。
つまるところ、このティム・バートン版はお猿によるシェイクスピアの再演ということになりそうだ。その観点から眺めると、やたらと演劇的な空間処理や妙に小技の利いた周辺描写がすべて説明できてしまう。猿山はそのまんまどこかの城だし、だからこそ中庭には楽師がいるし小人までが配置されている。オランウータンの奴隷商人は聞いたような警句を吐き続けるし(「十代の人間は始末に終えない」)、ゴリラの兵隊はやっぱりいかさま博打をやっている(もちろん足を使って)。一方では「登場人物」の動作形態を徹底的に類人猿に近づけることにより、シェイクスピア劇ならば修辞に満ちた朗々たる台詞があるべきところに「ウッキー」という雄叫びを出現させているのである。このあたりのティム・ロスの演技は特筆に値する。映画の目論みとしてはそれ以上でもそれ以下でもなかったようで、だから人間はひたすら添え物に徹している。主人公は退屈で、無愛想で無責任である。楽しむべきなのはティム・バートンによる卓越した場面造りの技術であり、その成果としての異様な芝居だということになる。この映画にまともなストーリーや衝撃的な結末、まして文明批判に満ちたメッセージなどを間違っても求めてはならない。だってこれは、ティム・バートンの映画なのだから。