プライベート・ライアン
- Aloysius' Rating:  6/10
1998年 アメリカ 170分
監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:トム・ハンクス、トム・サイズモア、エドワード・バーンズ、バリー・ペッパー、ヴィン・ディーゼル、マット・デイモン


予告編は実にシャープな感じがしたものだが、あいにくと本編の方はそうはいかなかったようだ。冒頭、オマハ・ビーチの戦闘シーンは見るべきところが多い。効果音もすごいと思う。しかし思い出したように手持ちカメラを使うあたりはドキュメンタリーを気取ったつもりかもしれないが、こちらとしては腰が据わっていないという印象を抱く。手ぶれが始まる前後のショットのフレームが固まりすぎていて、一貫性がないのである。人称の変化だとしても同じ理由から違和感を覚える。
話が動き始めてからはいくつかのエピソード(グライダーの装甲板の話とか)が面白いものの、それが映画としてのまとまりの中に組み込まれているわけではない。シーンごとにばらけているのはスピルバーグ映画の特徴だが、「プライベート・ライアン」の場合は撮影までが一貫性を欠いているので異なる二つの映画を並べて見せられているような気分になってくるのである。結末は気に入らない。全滅させて、それで何か意味があるのか。ついでながら最後の戦闘場面に関してはドイツ軍の描写も気に入らない。まともなドイツ軍があんな狭い場所に重戦車を(まして自走砲まで)持ち込むとは到底考えられないのである。
追記(2006/02/18):あらためてビデオで見直したものの、全体としての印象に変化はない。最後の戦闘シーンとその結果がひどく不自然に見えるのは、老年のジェームズ・ライアンが墓標に向かって敬礼するという場面から逆算されたものであろう。登場人物が劇中で提示するどことなく諦観に満ちた個人主義と反国家的とも言える態度はなんとなく後の 『ミュンヘン』 を予感させるが、やはりあまり出来はよろしくない。そしてドラマ部分がひどく不出来なのは、もしかしたら作り手自身がそこに関心を持っていなかったからなのではあるまいか。つまり作り手は感動のドラマではなくて、もっぱら戦時エピソードにのみ関心を持っていて、その関心が結実されたのが 『バンド・オブ・ブラザーズ』 なのではないか、という気もした。

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