9<ナイン> 9番目の奇妙な人形
- Aloysius' Rating:  7/10
2009年 アメリカ 80分
監督:シェーン・アッカー
出演:イライジャ・ウッド、ジェニファー・コネリー、クリストファー・プラマー、ジョン・C・ライリー、クリスピン・グローヴァ、マーティン・ランドー、フレッド・タタショア


人工頭脳が開発されて軍事に投入され、機械の反乱が起こって人類が滅んだ場所でむやみと目の粗い布で作られた人形が目覚めて影におびえながら仲間と出会い、影からあらわれた機械の怪物にさらわれた仲間を救うために仲間を誘って機械の巣窟にもぐり込むと仲間を救うついでに眠っていた人工頭脳を目覚めさせ、さらなる危険をおびき寄せるので戦いを決意し、人工頭脳の正体と自分たちの正体を探る。背景は1930年代で、明確な言及はないものの世界はあきらかにナチズムをまとい、戦争によって人類が滅んだあとにがれきの陰から現われるのは番号を記されたみすぼらしい人形の群れで、その正体は人間の残骸なのである。人形を神秘主義的に純化されたホロコーストの犠牲者と接続しても、必ずしも間違いではないだろう。生の喜びを垣間見ても、そこにはいかなる希望もなく、生存の使命もまたあいまいにしか与えられることがない。画面は陰鬱で登場人物は不気味だが、絵はきわめて美しい。人工頭脳がスクラップから作り出すグロテスクな機械の怪物も破壊的な機能美をまとい、そしてこちらは使命に対して忠実である。独特の、どちらかと言えば悪夢を思わせるコンセプトは傑出しており、場面ごとの作りにこだわりが見える。強いて難をあげれば全体としての構築に弱さが見え、それはつまるところもとになった短編映画から長編に仕立て上げる過程で発生した構造的なぶれに原因があるのではないかと考えているが、幸いにもそれでコンセプトを損なうようなことにはなっていない。見ていてこれほど気が滅入る映画もあまりないが、ある種の傑作であることは否定できない。

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