シベリアーダ
- Aloysius' Rating:  8/10
1979年 ソ連 199分
監督:アンドレイ・コンチャロフスキー
出演:ニキータ・ミハルコフ、ヴィタリー・ソローミン、ナターリャ・アンドレイチェンコ、リュドミラ・グルチェン、ウラジミール・サモイロフ、パーヴェル・カドニチコフ、セルゲイ・シャクーロフ


20世紀初頭のシベリア。冬眠ぼけのクマがなんとなく家のなかに入ってくるような村があり、その村の貧しい住民アファナシー・ウスチュザーニンは森へ分け入って木々を切り倒して道を作り、道を作るために一切のことを投げ出すので、アファナシーの幼い息子ニコライが村の裕福な隣人ソローミンの家から食べ物を盗んで飢えをしのいでいると、そこへ流刑地から逃げてきた革命家が爆弾を持って現われ、官憲もまた革命家を追って現われ、革命家と官憲が去ってニコライがおとなになったころに革命がおこり、革命の足音は二十年代に入ってようやく村に届いてニコライは興奮するが、ニコライの主要な関心は裕福な隣人の娘アナスターシャ・ソロミナにあり、天真爛漫で残忍なアナスターシャ・ソロミナはニコライをそでにして愛していないフィリップと結婚し、その上でニコライと駆け落ちするというややこしいことをするのでアナスターシャの兄スピリドン・ソローミンはニコライに対して怒りを抱き、それから10年ほどが経ち、ニコライは党の命令と息子アレクセイをともなって村に戻り、魔の森の奥に油田を作るために村の住民の動員にかかり、スピリドンは怒りを忘れていなかったのでニコライを殺害し、それからまた10年ほどがたち、孤児院から出てきたアレクセイが村に戻って村の娘ターヤと出会い、そこへ軍の徴募官が現われて祖国はドイツと戦争状態にあると告げ、志願したアレクセイは戦場でフィリップを救い、それから20年ほどが経ち、六級ボーリング技師となったアレクセイは仲間とともにモダンな装備を携えて村に戻って十分以上におとなになったターヤと再会し、巨大なやぐらが組まれて石油の試掘が始まり、その一方で党は水力発電所を作る計画を決定し、計画が実行されると村は水の底に沈むので、地方委員会の書記長となっていたフィリップは発電所の建設をはばむために石油の採掘を急がせる。
第一部が第二次世界大戦にいたるまでの半世紀ほどの期間を扱い、第二部は60年代の一時期に腰を据えて、もっぱら石油採掘に焦点をあてる。ウスチュザーニンの三代にわたる男たちと隣家のソローミンとがいちおう対立の軸を作っているが、明確な物語性を与えることよりも、時代の流れのなかに村を置いて素描を繰り返すことに主眼が置かれ、第一部ではリアリズムよりも象徴表現が目立ち、魔の森にある沼は瘴気を放って人間に幻影を見せ、村の長老はどこかの大地に根付いているのか、いつまでたっても変わらない。一方、ニキータ・ミハルコフが六級ボーリング技師に扮してほぼ出ずっぱりになる第二部ではリアリズムが強調されているように見えるが、これはおそらく社会主義リアリズムのパロディであろう。どちらかと言えば叙情性に傾斜した連続性に乏しい脚本は下手がやれば目の当てられないしろものになっていたはずだが、アンドレイ・コンチャロフスキーはそれを音楽的で心地のよい文体を駆使して見ごたえのある映像詩に仕上げている。エピソードとエピソードのあいだにはさみ込まれる記録映像の編集もすごいし、戦争の場面もきわめてシンプルでありながら創意に満ちている。

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