ブラインドネス
- Aloysius' Rating: 6/10
2008年 カナダ/ブラジル/日本 121分
監督:フェルナンド・メイレレス
出演:ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、アリシー・ブラガ、伊勢谷友介、木村佳乃、ドン・マッケラー、ダニー・グローヴァー
ある日、一人の男の視界が白濁したような光で満たされ、ものを見ることができなくなる。そして男に近づいた人々が接近した順に同じようにして視力を失い、政府は感染症と判断して感染者を隔離するが、隔離施設では医療処置はまったくほどこされず、視力を失った感染者は自治と自活を要求され、目が見えないということで片付けもできないし、正しい場所で排泄行為もできないし、ということで施設は見る間に荒廃し、ただ一人、眼科医の夫に付き添って見えるにもかかわらずに隔離されることを選んだ女性が見えることを隠しながら感染者の世話を続けるが、そうこうするうちに覇権を主張する感染者が現れて暴虐をふるい、隔離施設に火が放たれ、逃げ延びた人々は外界もまた同じような状況になっていることを知る。サラマーゴの『白の闇』の映画化。とはいえ、原作は未読なので人類がいっせいに目が見えなくなって、ということでこちらが思い出すのは
『トリフィド』
になる。ここで人類から視力を奪う感染症は象徴的な装置であり、視力を奪われた人類は視覚的な価値から切り離され、きわめてあいまいな草分け状態に放り出される。その結果、残るのはおもに性欲と食欲であり、それを背景とした支配欲であるという意外と想像力に乏しい図式になっている。ヒロインの位置づけもあいまいで、散文的に付与された盲人の価値判断に格別の介入をしようとしない。これならば全員を目が見えるまま孤島に放り出しても同じだし、いっそ全員から視力を奪って地味にディスカッション・ドラマにしたほうがよかったのではあるまいか。フェルナンド・メイレレスの演出に創意は十分にうかがえるが、どうせならほかの原作を選ぶことはできなかったのか。
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