Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street

スウィーニー・トッド　フリート街の悪魔の理髪師
- Aloysius' Rating: 　7/10

2007年　アメリカ・イギリス　117分
監督：ティム・バートン
出演：ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム＝カーター、アラン・リックマン、ティモシー・スポール、サシャ・バロン・コーエン

ブロードウェイミュージカルの映画化。美しい妻とともに幸せに暮らしていた床屋ベンジャミン・バーカーがその妻に懸想したターピン判事の罠にはまり、無実の罪で十五年を国外で送り、ようやく帰国を果たすと妻の姿はすでになく、成長した娘はターピン判事によって幽閉されている。ベンジャミン・バーカーは判事への復讐を誓ってスウィーニー・トッドを名乗り、ラベット夫人のパイの店の真上に床屋を開いてターピン判事を待ち受けるが、機会を逃すと怒りにまかせて無差別殺人に走り、できあがった死体はラベット夫人のパイの材料となる。
どちらかと言えばシンプルであったはずの本来の話を典型的な復讐譚の枠組みに押し込んだ結果、行為の結果と動機のバランスが崩れている。この素材にふさわしいプロットは、「三文オペラ」的な自堕落ではなかったか。ティム・バートンはこのブロードウェイミュージカルを独自の空間に展開して期待通りの非凡さを発揮しているが、もともとのミュージカルがはらんでいる凡庸さがティム・バートン的なキャラクターの自己完結と対立し、居心地の悪さを感じさせる。視覚的には豊かだし、目に見えるような瑕疵はまったくないが、ティム・バートンとしては水準ということになるだろう。期待を上回ることを期待するこちらに問題があるのかもしれない。