ハンニバル・ライジング
- Aloysius' Rating:  6/10
2007年  イギリス・チェコ・フランス・イタリア・アメリカ 121分
監督:ピーター・ウェーバー
出演:ギャスパー・ウリエル、コン・リー、リス・アイファンズ、ケヴィン・マクキッド、スティーヴン・ウォーターズ、リチャード・ブレイク


1944年のリトアニア。ハンニバル・レクター少年は湖畔にたたずむ「レクター城」で家族とともに平和に暮らしていたが、退却中のドイツ軍が城に接近してきたため、一家は戦争を避けて山小屋へ避難する。ところが山小屋の前には森を破ってソ連軍の戦車が現われ、そこへシュトゥーカが飛来して戦闘になり、一家の大人は銃撃や爆発に巻き込まれて全滅し、生き残ったレクター少年と幼い妹が山小屋で暮らしているとリトアニアの脱走兵とおぼしき連中が数人でやって来て二人を捕らえ、間もなく飢えに襲われて妹を食べる。それから八年後、ハンニバル・レクターは「レクター城」の孤児院から脱走してパリを訪れ、そこで叔父の妻レディ・ムラサキに迎えられて医学校に進み、実務研修生として死体になじみながら妹を殺した犯人を捜し求める。
原作は未読。開巻間もなく、シュトゥーカとT-34が相打ちになるところで腹を抱えて笑っていた。もう少しましなシチュエーションを思いつくことができなかったのか。スターリンの肖像を掲げたソ連の孤児院もなんだか変だし、設定を後付したとした思えないリトアニア人ハンニバル・レクターという名前もやっぱり変だし(まさか本名だとは思わなかった。レクター城、って本気で言っているのか?)、レディ・ムラサキに至ってはなにがなんだかわからない、という感じだが、演出は統一があり、撮影は美しく、展開はおおむねよどみがない。主演のギャスパー・ウリエルはそれなりに見ごたえがあったし、ブダペスト・ロケとおぼしき50年代のパリも雰囲気が出ていたと思う。とはいえ、これがハンニバル・レクターの若き日であったとすると、音楽や絵画の趣味は早々と完成していたことになるし、絵について言えばかなりの量を描いているにもかかわらずほとんど上達していない、ということにならないか。進歩とはあまり縁のないひと、ということなのかもしれない。まあ、だから惰性でひとをいっぱい殺した、ということなのかもしれないが。この前歴を後のレクター博士とその行動に結びつけるのはいささか無理があるような気がしてならないのである。

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