大いなる遺産
- Aloysius' Rating:  6/10
1998年 アメリカ 111分
監督:アルフォンソ・キュアロン
出演:イーサン・ホーク、グウィネス・パルトロー、ハンク・アザリア、クリス・クーパー、アン・バンクロフト、ロバート・デ・ニーロ


ディケンズ『大いなる遺産』の翻案。ヴィクトリア朝ではなくて現代が舞台なのでピップは徒弟ではなくなり、ジョーは親方ではなくてフロリダの漁師に変わり、、ジョーの妻はピップ本人の姉ということになり、まわりにいたはずの卑屈な人間や悪党は姿を消し、だからピップは特に誰からもいじめを受けていない。ピップが受け取る遺産も成功への踏み台に変更され、つまりどこからか遺産を受け取るという期待もなくなっているため、伝統的な邦題とは内容が結びつかなくなっている。そして前半の舞台は明るいフロリダになり、ロバート・デ・ニーロ扮する脱獄囚は沼地にではなく遠浅の海の水の下に潜んでいるのである。ディケンズ的な俗物根性を大胆不敵に振り落としてピップ(本作ではフィネガン)とエステラの不器用なラブストーリーに話を集中した結果、ディケンズのプロットだけがモダンな背景にひどく不自然な姿勢で寄りかかることになり、どうしてこんなことを考えたのか、少々首をひねりたくなってくる(原作の精神を受け継いでいる、という意味ではサウスパーク版『大いなる遺産』、つまり第四シーズンの『Pip』のほうがそれらしい。ちなみにナレーションはマルカム・マクダウェルであった)。とはいえ、それはそれとしてもアルフォンソ・キュアロンの演出は非常に確かなものであり、とりわけ肉感的な描写には冴えが見える。撮影も全体に美しく、また劇中に登場するフランチェスコ・クレメンテの絵がまた魅力的で、その使い方も気が利いていた。

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