それでも生きる子供たちへ
- Aloysius' Rating:  6/10
2005年 フランス・イタリア 130分

タンザ
監督:メディ・カレフ
出演:ビラ・アダマ

ルワンダの少年兵ばかりのグループが草原を越えて走り、とある村の襲撃をたくらみ、爆弾を与えられたタンザは村の学校へ忍び込むが、そこで平和な生活の気配に出会って涙にくれる。少年兵ばかりで構成された自律的な戦闘集団、という設定は不自然であろう。勝手にやめて村へ帰るなり、すると思う。
ブルー・ジプシー
監督:エミール・クストリッツァ
出演:ウロス・ミロヴァノヴィッチ

前科550犯という十五歳の少年が少年院での務めを終え、理容師になるつもりで出てくると、極悪非道な親父が早速盗みを強要し、すぐに追われるはめになって少年院に逃げ戻る。細部からリズムから、クストリッツァの作品である。
アメリカのイエスの子ら
監督:スパイク・リー
出演:ロージー・ペレス、ハンナ・ホドソン、アンドレ・ロヨ

両親がHIV感染者でしかも薬物中毒で、本人もHIV感染者、という女の子が学校でいじめにあい、死への恐怖におびえて叫び、HIV感染者のサークルに出席して、そこでようやく光を見つける。あり得る状況であるにしても、その状況を上から眺めて光で照らしてやろうという魂胆が気に入らない。
ビルーとジョアン
監督:カティア・ルン
出演:フランシスコ・アナウェイク・デ・フレルタス、ベラ・フェルナンデス

サンパウロのスラムに住む兄と妹がくず拾いに励み、市場でも機転を利かせて小銭を稼ぎ、一生懸命頑張ったけれど、稼ぎはいまひとつで終わり、それでもくじけずに期待を明日につなげていく。これは悪くない。
ジョナサン
監督:ジョーダン・スコット、リドリー・スコット
出演:デヴィッド・シューリス、ケリー・マクドナルド

戦場写真家が鬱状態に陥っていると自分を呼ぶ声が聞こえ、声のするほうへ行ってみるとボートに乗った子供たちが呼んでいるので、自分もまた子供の姿になってボートに乗り込み、着いた先は戦場で、そこでは親を失った子供たちがたくましく生きている、という思いつきだけの寝ぼけたような話である。
チロ
監督:ステファノ・ヴィネルッソ
出演:ダニエリ・ヴィコリト、エマヌエーレ・ヴィコリト

ナポリの貧困階層の少年が暴力的に盗みを働き、現場にかけつけた警官や市民が治安の悪化を嘆き、少年は遊園地へ出かけていって盗んだ物を故買屋に売る。ヴィットリオ・ストラーロが撮ったナポリの情景が魅力的だが、学芸会じみた市民の嘆きを入れたせいでなんだかよくわからないものに仕上がっている。
桑桑と小猫
監督:ジョン・ウー
出演:ザオ・ツークン、チー・ルーイー

現代共産中国でお嬢様な生活を送っているソンソンの家では両親が不和になり、ソンソンが癇癪を起こして捨てた人形は貧しいシャンマオの持ち物になる。シャンマオは捨て子で、くず拾いのおじいさんに拾われて一緒に暮らしていて、おじいさんはシャンマオを学校にやるためにお金を貯めていたけれど、ある日交通事故にあって死んでしまい、天涯孤独となったシャンマオは女工哀史な生活に落ち、一方、ソンソンの母親はソンソンを連れて心中することを考えている。ジョン・ウーらしく短いところへたっぷりと話を盛り込んでいるが、これもジョン・ウーらしいところで紋切り型から出ることはない。

近場の状況を見たまんまに映像化しているクストリッツァの『ブルー・ジプシー』とカティア・ルンの『ビルーとジョアン』は見ごたえがあった。『チロ』のステファノ・ヴィネルッソにも同じ材料があったはずだが、どうにも手つきが青臭い。そしてほかの監督はすでに出発点で分が悪い。そういうものはあまり見たことがないので考えなければならなかったのである。考えた上で解答用紙にそのまま答えを書いてきたようなスパイク・リーが最低であろう。

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