殺意の瞬間
- Aloysius' Rating:  7/10
1956年  フランス 114分
監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ
出演:ジャン・ギャバン、ダニエル・ドロルム、ジェラール・ブラン、リュシエンヌ・ボガエル、ジェルムーヌ・ケルジャン


名高い料理人アンドレ・シャトランの前に二十年前に別れた妻ガブリエルの娘カトリーヌが現われ、ガブリエルの死を告げる。シャトランは素朴な同情心からカトリーヌを受け入れ、貧しい医学生ジェラール・ドラクロワを紹介するが、カトリーヌはジェラールを袖にしてシャトランになびき、さらに虚言を弄してシャトランとジェラールの関係を悪化させる。その上にシャトランを篭絡して妻の座に収まるが、今度はシャトランの前にカトリーヌのマルセイユ時代を知る男が出現し、死んだはずのガブリエルが実は生きていたことが明らかになり、追い詰められたカトリーヌは今度はジェラールを篭絡してシャトランを亡き者にし、遺産を手にしようとたくらみ始める。
いかにも清純そうな外見をしたカトリーヌは観客の前に早々と二心を見せ、だまされているジャン・ギャバンがいったいどうなるのか、というサスペンスで気を持たせるが、さすがはジャン・ギャバンと言うべきであろう、自分がだまされていたことがわかっても、まったく動じないのである。シンプルではあるが伏線を織り込んだ人物造形、登場人物(ムクイヌを含む)の配置の効率のよさ、状況を刈り込む手際のよさには感嘆する。とはいえ、わたしがもっぱら感心していたのはこのいささか古めかしいサスペンス劇の出来のよさではなく、ジャン・ギャバンの堂々たるシェフぶりであり、その手つきのよさなのである。そしてヌーヴェル・キュイジーヌ以前のフランス料理のメニューが山ほど登場し(と言っても画面にはほとんど映らないが)、それがまたどれもうまそうなのであった。

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