あるいは裏切りという名の犬
- Aloysius' Rating:  7/10
2004年  フランス 110分
監督:オリヴィエ・マルシャル
出演:ダニエル・オートゥイユ、 ジェラール・ドパルデュー 、アンドレ・デュソリ、ロシュディ・ゼム、ヴァレリア・ゴリノ、 ミレーヌ・ドモンジョ


パリ警視庁でBRI(探索出動班)を率いるレオ・ヴリンクス警視とBRP(強盗鎮圧班)を率いるドニ・クラン警視はいわば宿敵の関係にあったが、連続武装強盗事件の捜査でレオ・ヴリンクス警視は誰にも相談できないような問題を抱えることになり、一方、ドニ・クラン警視は連続武装強盗団の監視中に得体の知れない行動を取って警察に損害を与えることになる。ドニ・クラン警視は内務調査班によって追い詰められるが、そこへ持ち込まれた情報によって逆にレオ・ヴリンクス警視を追い詰めることに成功し、その結果、ドニ・クラン警視は警視庁のトップに立ち、レオ・ヴリンクス警視は罪を問われてぶち込まれる。正義を愛するのがダニエル・オートゥイユ演じるレオ・ヴリンクスで、権力を愛するのがジェラール・ドパルデュー演じるドニ・クランである。両者の対照は驚くほど明瞭で、前者が上司からも部下からも妻からも娘からも、どうかすると犯罪者からも慕われているのに対して、後者は上司からも部下からも妻からも、そしてもちろん犯罪者からも疎んじられている。このかなり単純で極端な人物設定にダニエル・オートゥイユとジェラール・ドパルデューがそれぞれの演技で人生の重みに耐える姿を与えると、不思議なほどの深みと味わいが生まれてくる。警官出身という監督オリヴィエ・マルシャルの演出は全体に淡々としているが、場を作り上げるのに巧みで、テンションは最後まで保たれる。視覚的なデザインにはある種の愚直さを感じたが、その繰り返しを恐れずに進めることでスタイルに昇華させている。いわゆるノワールの系列からすれば、ジャン=ピエール・メルヴィルやジョゼ・ジョバンニなどとは明らかに違う系譜に属しており、情感自体をも断片化して距離を取る手法はモダンに見える。ちなみにIMDBによると、ミレーヌ・ドモンジョの家にいた前科者クリストが監督本人だった模様。

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