バーバー
- Aloysius' Rating:  7/10
2001年 アメリカ 116分
監督・脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
出演:ビリー・ボブ・ソーントン、フランシス・マクドーマンド、ジェームズ・ガンドルフィーニ、トニー・シャロープ、マイケル・バダルコ、スカーレット・ヨハンソン


1950年ごろのカリフォルニア州サンタローザ。チェーンスモーカーでひどく無口な上に記憶にとどめられることが少ない男エド・クレインは義弟が営む小さな床屋で理髪師をしている。その妻ドリスは地元にある小さなデパートで経理をしているが、エド・クレインはドリスがデパートの経営者で戦争の英雄でもあるデイヴと関係を持っているものと疑っている。あるとき床屋へひとりの男が現われてもうけになるという出資話(ドライクリーニング)を口にすると、なぜかエド・クレインの心が動き、話に乗ることに決めると資金を得るために恐喝を選び、第三者を装ってデイヴに不倫を暴くぞという手紙を送る。恐れを抱いたデイヴはエド・クレインに相談を持ちかけ、エド・クレインに勧められるままに金を払う。エド・クレインは手にした金をもとに出資契約を交わすが、間もなくデイヴから呼び出しを受けて悪事が露見したことを知る。そして襲いかかってきたデイヴに首を絞められるので、予告されていた小道具で反撃に出てデイヴを殺害、エド・クレインはそのまま現場から立ち去り、翌日、警察はなぜかドリスを逮捕する。
モノクロームの撮影が美しく、脚本はひねりが利いており、きわめて構築的な作品に仕上がっている。巻頭、ビリー・ボブ・ソーントンが顔を出すと、これがもう田舎の床屋としか言ってみようのない顔をしているところにまず驚かされた。小心な田舎者が浅知恵で余計なことに手を出して破滅するというプロットは 『ファーゴ』 を思い出させるが、こちらはビリー・ボブ・ソーントン扮するエド・クレインのモノローグをとおして進んでいくので手元に引き寄せられた疎外感が際立っている。そしてこの男が信頼できない話者として登場し、内心の動揺を糊塗するために、あるいは一瞬でも決断を遅らせるために、あるいは自分はなにかをしているということを周囲に知らせるために、しきりとタバコを吸い続けるのである。なんとなく身に覚えのあることなので、見ているうちに気が重くなった。「そこにいなかった男」という原題はかなり非情であろう。妻の冤罪をはらすために真犯人から依頼を受けた弁護士がトニー・シャロープで、不確定性原理まで持ち出すいかがわしい敏腕ぶりが面白い。

IMDb IMDb で  を検索します。
* Search provided by The Internet Movie Database.