マスターズ・オブ・ホラー
- Aloysius' Rating: */10
2005年 アメリカ 製作:ミック・ギャリス 13話 各話60分
ムーンフェイス (Incident on and off a Mountain Road)
監督:ドン・コスカレリ
出演:ブリー・ターナー、イーサン・エンブリー、アンガス・スクリム
70年代からそのまま引っ張り出してきたようなセンスにちょっとげっそりしながら見始めると、山のなかの一本道で事故に遭った女性が目の前に出現した殺人鬼に追われて森に逃げ込み、きゃあきゃあ叫んでいるうちに意を決して反撃に移る。亭主からサバイバル術を仕込まれていたのである。反撃に移ってもまだきゃあきゃあやっているところにはいささか苛々させられたし、中盤から死体の山や、殺人場面のサディスティックな描写はただ不快であった。出来云々以前に好みの問題ということになるが、これは嫌い。
魔女の棲む館 (Dreams in the Witch-House)
監督:スチュアート・ゴードン
出演:エズラ・ゴッデン、キャンベル・レイン、スーザン・ベイン
ミスカトニック大学の学生がとある家の二階に一室を借ると壁の裏から怪しい物音が聞こえてきて、階下からは奇怪な祈祷の声が聞こえてくる。間もなく奇妙な夢を見るようになり、人間の顔をしたネズミを目撃し、階下に住む老人から恐るべき魔女の存在を知らされる。そしてその魔女が白昼堂々出現して学生を誘い、なにしろ監督がスチュアート・ゴードンなのでそういうことになり、それやこれやで恐ろしい目に遭った揚げ句に真実を告白したら精神病院に放り込まれる。原作はラブクラフトで、いかにもラブクラフト的にスケールの小さな話だが、狂人の証言を科学捜査が裏付けたりといった趣向も盛り込まれている。とにかくスチュアート・ゴードンの作品にはなっていた。
ダンス・オブ・ザ・デッド (Dance of The Dead)
監督:トビー・フーパー
出演:ジェシカ・ロウンデス、ジョナサン・タッカー、ロバート・イングランド
第三次世界大戦後のアメリカ。荒廃した町で母親とともにダイナーで働くペギーはある日ジャックと名乗る若者に誘われて町の外にあるいかがわしい一角へ出かけていくと、そこでは死者を躍らせて見せ物のしている。原作はリチャード・マシスンらしい。荒廃した雰囲気はそれなりによく出ていて、ガスマスクをつけた二人組が生きている死体を黙々と処理していたり、若者が老人を襲って採血をしていたりしていたが、結末に立ち至っていきなり浮上するモラルの問題を含め、素材の古めかしさは否めない。
愛しのジェニファー (Jenifer)
監督:ダリオ・アルジェント
出演:スティーブン・ウェバー、キャリー・アン・フレミング、マーク・アチェソン
刑事のフランクは浮浪者とおぼしき風体の男が女を殺そうとしている現場に遭遇し、男を射殺して女を救う。女は異様な形相の持ち主で、しかも言葉をしゃべらず、撃たれて瀕死の男が口にしたジェニファーという一言で名前だけしかわからない。刑事のフランクはこのジェニファーになぜか惹きつけられ、収容施設から救い出して自宅に運び、かくまおうとするのでフランクの妻は反発、家を出てしまう。それからフランクは急速に落ちぶれ、ジェニファーの恐ろしい性向もあきらかになり、見せ物小屋に売り飛ばそうとして失敗すると、職を捨て、家を捨て、ジェニファーとともに森にひそんで新たな生活を築こうとするが、ここでもまた恐ろしいことが起こるのである。ダリオ・アルジェントらしいグロテスクな話で、目を覆うような場面が多いものの、通俗的な面白さで最後まで見せてしまう。
ゾンビの帰郷 (Homecoming)
監督:ジョー・ダンテ
出演:ジョン・テニー、テア・ギル、ロバート・ピカード、ショーン・ケアリー
正義のない戦争で戦死者が相次いでいるなか、大統領選を間近に控えて大統領の選挙参謀がテレビに出演し、戦争で死んだ彼らはアメリカの大義を理解しているはずであり、できることなら彼らに戻ってきてほしい、などという与太を飛ばした結果、本当に戦死者が蘇り始めて大統領選に投票するために投票所を目指して進み始める。現職大統領の選挙本部ではこれを新たな支持者として歓迎するが、間もなくこの連中がリベラルに与していることが判明すると掌を返して弾圧に移り、公衆衛生上の問題を理由に強制収容所に隔離する。しかしながら世論の圧力に負けて解放せざるを得なくなると、今度はゾンビ兵士に政府支持を強要し、それにも失敗すると、かつての大統領選でフロリダでやったような恐ろしい陰謀を実行に移すのである。いかにもジョー・ダンテらしい、よくできた政治喜劇に仕上がっている。アンチ・リベラルのオピニオン女史に扮したテア・ギルの身も蓋もないいけいけどんどんぶりが面白い。
ディア・ウーマン (Deer Woman)
監督:ジョン・ランディス
出演:ブライアン・ベンベン、シンシア・モウラ、アンディ・トンプソン、スティーヴ・アーチャー
鹿の蹄で踏み潰されたような惨殺死体が次々に見つかり、動物襲撃事件担当という刑事が捜査にあたっていると事件の周囲に怪しい女の影が現われ、さらにアメリカ先住民族の言い伝えにある鹿女の存在が、という相当にいかがわしい話をジョン・ランディスが確かな演出力でなかなかに見ごたえのある作品に仕上げている。ブライアン・ベンベン扮する動物事件専任刑事のうらぶれた風情がいい感じ。劇中、人間を襲う動物ということで1981年にロンドンに現われた
殺人狼
のことが話に出るという楽しいおまけもついている。
世界の終わり (Cigarette Burns)
監督:ジョン・カーペンター
出演:ノーマン・リーダス、ウド・キア、クリス・ブリットン
ホラー映画専門の映画館を経営しながらコレクター向けの収集を請け負っている男(ノーマン・リーダス)が怪しい金持ち(ウド・キア)からの依頼を受けて"Le Fin Absolue du Monde"という映画を探すことになる。30年ほど前に一度だけ、映画祭で上映されたことがあり、そのときには観客席に死体がごろごろ転がることになったといういわくがあり、フィルムは政府によって没収され、廃棄されたことになっていたが、実は現存しているというその証拠がすごい。そこでまず映画を見たことのある評論家を探し出して話を聞くとこれが頭を破壊されて恐ろしいことになっているし、パリへ移動してアーカイブで聞き込みをすると出てくる話は恐ろしいし、というようなことをやっているうちにフィルムに刻印されたパンチマークが現実に浮かび、死者を幻視するようになり、どんどんおかしなことになっていく。
コレクターがとにかく悪辣で異様だったり、悪評高い謎の映画の監督の名前が東欧系だったり、ホラー専門映画館で上映作品のフィルムからパンチマークのフレームを抜き取ってはコレクションにしていたり、といったあたりがこちらのツボにはまっていて、しかも次第にあきらかになってくる"Le Fin Absolue du Monde"の正体がどことなく『フリッカー』なところも楽しくて、これはかなりの見ごたえがあった。ウド・キア扮するコレクターの壮絶な死に様がすごい。
虫おんな (Sick Girl)
監督:ラッキー・マッキー
出演:アンジェラ・ベティス、エリン・ブラウン、マーシア・ベネット、ジェシー・フルビク
昆虫学修士で博物館に勤めるアイダは虫を愛でる女だったが、その虫が原因で恋人に恵まれずにいる。ところが博物館でいつもスケッチをしている少女ミスティに声をかけると、すぐさま関係は発展し、互いに愛を誓うまでの仲になる。ミスティはアイダと同棲するようになるが、そのアイダの部屋にはブラジルにいる謎の人物から送られてきた謎の昆虫が枕のなかに隠れていて、この昆虫に刺されたミスティは次第に奇怪な行動を取るようになり、結果としてうるわしいはずであった女同士の同棲生活がすぐさま所帯じみたものに変容する。それというのも謎の昆虫には秘められた習性があったからで、それはそれで恐ろしいことになるものの、正体はレズビアンをネタにしたいささか悪趣味なコメディである。どこまで笑っていいのか少々困惑したけれど、レズビアンの昆虫学修士に扮したアンジェラ・ベティスの役作りが面白い。
ハンティング (Pick Me Up)
監督:ラリー・コーエン
出演:ファイルザ・バーク、マイケル・モリアーティ、ウォーレン・コール
山のなかの一本道でバスが故障し、運転手と五人の乗客が途方に暮れている。するとそこへ年老いた殺人鬼と若い殺人鬼が別々に現われて、それぞれのこだわりで殺し始める。ところが互いの存在があきらかになると縄張りの問題もまたあきらかになり、ふたりの殺人鬼は最後に残った乗客ひとりをあいだにはさんであてこすりなどを繰り返し、状況はほとんど漫才のようになっていく。さすがラリー・コーエンという感じのひねくれぶりで、テンポのよいダイアログが心地よい。年老いたほうの殺人鬼に扮したマイケル・モリアーティがいつものように善人面を貼りつけたポーカーフェースで実にいい味を出している。
ヘッケルの死霊 (Haeckel's Tale)
監督:ジョン・マクノートン
出演:デレク・セシル、ジョン・ポリート、トム・マクベス、リーラ・サヴァスタ
19世紀のマサチューセッツ。医学生アーンスト・ヘッケルは死者の再生がおこなえると教授に向かって豪語し、実証しようとしてものの見事に失敗する。そこで目先を変えることにしたのか、死体蘇生者を自称する謎の男モンテスキーノに接近してその秘術を聞き出そうと試みるが、これにも失敗、死の床にある父を見舞うために徒歩で旅に出て、途中、雨のなかで一軒の家に宿を求める。その家には老人の夫と若くて美しい妻がいて、深夜、ヘッケルが床に入っていると見知ったモンテスキーノが戸口を叩き、妻は夫を置いて姿を消す。
原作はクライヴ・バーカーの短編らしい。話の目論見がシンプルな割りには余計な枝葉が目立ち、いまひとつ要領を得ないものの、とにかく結末ではかなりあほらしくて悪趣味なネクロフィリアの世界に落ち込んでいく。もう少し即物的で手際のよい演出になっていたら、往年のハマーのような感じになっていたかもしれない。
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