バス男
- Aloysius' Rating:  5/10
2004年 アメリカ 95分
監督:ジャレッド・ヘス
出演:ジョン・ヘダー、エフレン・ラミレッツ、アーロン・ルーエル、ジョン・グリース、ティナ・マジョリーノ


ナポレオン・ダイナマイト(本名)はどこかぬぼっとした感じの高校生で、取り柄に乏しい割りには妙なところで自信過剰で、オタクかどうかはともかくとしても、どうにも社会と折り合いが悪い。両親はどこへ行ったのか影もなく、おばあちゃんと三十二歳の引きこもりの兄とアイダホの田舎町で暮らしているが、そのおばあちゃんが年寄りの冷や水で四輪バイクなどに乗るものだから怪我をして家へ帰れなくなり、代わりにリコ叔父さんが面倒を見にやってくる。ところがこの叔父さんもどこかで勝手に完結していているし、引きこもりの兄は毎日四時間もチャットをして恋人を探すのに忙しいし、本人は学校でいじめにあっている。そういうナポレオン・ダイナマイトに転校生でメキシコ人のペドロという友達が出現すると状況が少々動くようになり、女の子とダンスパーティに出かけていくし、ペドロが生徒会長に立候補すると応援するし、最後にはガールフレンドもできるという実はいたってふつうの学園物青春映画なのである。ただ主人公は最初から最後までぬぼっとしていて表情に乏しいし、まわりの連中もぬぼっとしていて表情に乏しいか、さもなければただ表情に乏しくて、しかもすることは全体に力が抜けている。脱力系コメディ、と言われるゆえんであろうが、それでもこの間抜けな連中は生きているのだ、と言いたいのか、それでもこの間抜けな田舎者は生きていると言いたいのか、もしかしたら後者ではないかと激しく感じるくらい、どんくさい田舎の話になっている。あるいはなにか、よほど恐ろしいことがどこかで起こって、そのせいで年寄りが四輪バイクで砂漠を走り、四十代は八十年代に帰りたがってタイムマシンを探し求め、三十代は引きこもり、十代はぬぼっとした表情のまま世界を罵っているのであろうか。作り自体はていねいだし、作風に一定のスタイルは認められるが、単調である。原形になっているのはDVDの特典映像に含まれている十分足らずのモノクロ短編映画『Peluca (2003)』で、比べてみるとこの短編のほうがまだ元気があって面白い。

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