怒りの葡萄
- Aloysius' Rating: 7/10
1940年 アメリカ 129分
監督:ジョン・フォード
出演:ヘンリー・フォンダ、ジェーン・ダーウェル、ジョン・キャラダイン、ラッセル・シンプソン、チャーリー・グレープウィン


1930年代のアメリカ。オクラホマの農民が土地を追われ、古ぼけたトラックに一切合切を積み込んで一族郎党でカリフォルニアを目指す。ルート66に乗って西へ進み、その道中で悲惨をなめ、ようやくカリフォルニアに着いてみると、そこでも不景気が吹き荒れて仕事はなく、行き暮れた農民の群れがキャンプにあふれ、地主と警察は横暴をおこない、一家の長男はそこに矛盾を認めて静かな怒りを育んでいく。
スタインベックの長大な原作を刈り込み、悪趣味な部分は取り除いているが、それでも農民の悲劇を克明に描き出している。話が恐ろしく深刻なだけにいつものジョン・フォード作品にあるようなユーモアはここではすっかり影をひそめ、画面は暗く、登場人物は影を背負う。冒頭、セットで作り出されたオクラホマの農地の荒廃は目を覆うばかりである。点景として背後に配置された流浪の農民の姿も見事なもので、ほとんどドキュメンタリーの迫力がある。ジョン・フォードの演出もさることながら、グレッグ・トーランドの撮影がすごいのであろう。わずかに垣間見える人間の情味、ジェーン・ダーウェル扮する母親の悲しみは見ていて思わず涙を誘う。とはいえ原作の要所を拾い、どうにか話をつないでいる性格からか、全体から受ける印象は多少の散漫さを否めない。

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