エル・シド
- Aloysius' Rating: 8/10
1961年　アメリカ　171分
監督：アンソニー・マン
出演：チャールトン・ヘストン、ソフィア・ローレン、ラフ・ヴァローネ、ジョン・フレイザー、ジュヌヴィエーヴ・パージュ、ハーバート・ロム

十一世紀のスペインを舞台にレコンキスタの英雄エル・シドを描き、クライマックスは1094年のヴァレンシアにおける攻防になっている。ただし、この戦闘でエル・シドが戦死したという史実はない。3時間近い長尺だが、中身はとにかく盛りだくさんで、カスティリヤ王家の内輪もめ、裏切り、暗殺、アラゴンとの闘争などを手際よく描き、当時のスペインの惨憺たる有様をよく伝えている。暗愚で疑い深いキリスト教徒の王に比べて、イスラムの王が賢明で誇り高く描かれているところは歴史的にも公平であろう。宮殿や寺院を背景にしたいくつかのシーンは驚くほど壮麗で、馬上槍試合の場面も風格があり、攻城兵器を連ねたヴァレンシア攻防戦はスケールが大きい。チャールトン・ヘストンは精悍で品格があり、エル・シドにふさわしく、ソフィア・ローレンはその妻ヒメナを演じて美しい。というわけで剣戟の殺陣などがいささか古めかしいところがあるものの、全体にいわゆるハリウッド史劇よりも知的な取り組みがおこなわれており、なかなかに立派な映画なのである。
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