市民ケーン
- Aloysius' Rating: 7/10
1941年 アメリカ 119分
監督:オーソン・ウェルズ
出演:オーソン・ウェルズ、ジョセフ・コットン、エヴェレット・スローン、アグネス・ムーアヘッド
チャールズ・フォスター・ケーンは賢明な母親から信託資産を受け継ぎ、資産のなかにあった新聞社に興味を示して新聞の発行に取り組んでいく。三面記事を一面に引き上げ、貧困階級の味方を自称し、感情を煽り、ライバル新聞社から記者を引き抜き、新聞発行人としての成功を収めると大統領の姪と婚約し、結婚してからはペンシルバニアの知事選に出馬し、歌手との不倫関係を暴露されて落選すると大統領の姪と離婚して歌手と結婚、才能のない妻のためにシカゴにオペラハウスを建築し、才能がないからと言って嫌がる妻に全国ツアーを無理強いし、妻が自殺未遂によって歌手から足を洗うとフロリダの広大な敷地に城を建設、妻とともに引きこもり、その妻から見捨てられると一人になって引きこもり、「バラのつぼみ」という謎の一言を遺して息絶える。
オーソン・ウェルズ25歳の作品である。ニュース映画、インタビュー、回想場面などを多用し、視覚的にも野心的かつ実験的であり、可能性を疑わない若気の至りの意気込みには感じ入るが、もっぱら目に入るのは小手先めいた才気ばかりで、考慮の上で完成された映画ではない。デザインは目立つが中身はたいしたことがないのである。たとえばジョセフ・コットン扮するリーランドの回想場面で使われているリアプロジェクションはシンプルだが洗練されており、思わずはっとさせられるが、その一方、人物関係は未成熟のまま投げ出され、登場人物の動作所作は時としてリアリティを欠いている。いや、つまり、つまらないことかもしれないけれど、歯痛で苦しんでいる人間が笑うだけで歯痛から逃れられるとは思えないし(もちろん歯痛は嘘だった、という解釈も可能だが、だとすれば歯痛は余計なだけだ)、それまで荒れ狂って部屋を破壊していた人間が振り向きざまに机の隅のガラス製スノーボールを手に取ることも難しいだろう、とわたしには思えるのである。
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