英雄
- Aloysius' Rating: 5/10
2002年 香港・中国 99分
監督:チャン・イーモウ
出演:ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイー


秦の国の無名という名の役人が秦王に拝謁を許される。王の前にあっては本来ならば百歩の距離を取らねばならなかったが、無名はすでに趙の刺客「長空」を倒し、その槍を携えていたので王の前に二十歩の距離まで近づくことを許される。いかにして「長空」を倒したのか、という秦王の問いに対して、無名は剣術と音楽との結合によって倒したようなことを説明するが、再現された映像によると、一緒に琴の音を聞いているうちにどちらともなく意識の中で戦って、弦が切れたところで一気に前へ飛び出したような具合になっている。さて、無名は秦王に二十歩前まで近づいたが、この男はさらに趙の刺客「飛雪」と「残剣」を倒していたので、もう十歩近づくことを許される。どのようにして「飛雪」「残剣」を倒したのか、という秦王の問いに対して、無名は痴情のもつれを利用して、というようなことを答えるが、事実そのような場面が再現される。ところが秦王には残剣と面識があり、それというのもかつて残剣が宮殿に現われて、あと一歩というところまで秦王を追い詰めていたからであったが、その一事によって秦王は残剣が大人物であるという印象を抱いていた。そして秦王が大人物と認めるような男ならば痴情のもつれによって滅びる筈はないのである。秦王が無名に事の真贋を問い質すと、無名は偽りがあったことを認めてそれまでとは違う話をし始める。
で、結果的に二度も三度も同じような場面を見せられて、それが格別面白いわけではないのでちょっとしんどい思いをしたのである。しかもワイヤーアクションは長くて大袈裟だし、秦の軍隊の攻撃というのが度を越して経済効率を無視しているし、画面は連続性が乏しいし(砂漠と湖水と落ち葉の林はどこでどうくっついているのか)、たしかに撮影は美しいけれど、どちらかと言えば新型テレビのコマーシャル・フィルムを思わせる。作品にある種の美意識が存在しているのは事実だが、個々の場面はおそらく独立して存在しているだけで、映画的な意味での心地よさは備えていないし、関心の対象にもなっていない。

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