暗黒街の弾痕
- Aloysius' Rating:6/10
1937年 アメリカ 84分
監督:フリッツ・ラング
出演:ヘンリー・フォンダ、シルヴィア・シドニー
エディ・テイラーは強盗の罪で服役していたが、模範囚で刑期を終えて新しい仕事も紹介され、しかも弁護士の秘書ジョアンと恋仲になっていた。出獄してきたエディはまずジョアンと結婚して幸福を味わい、ジョアンが予約した宿で一夜を明かそうとするが、その宿の主人は犯罪マニアで犯罪雑誌の購読者であったため、エディは前科者としての正体を知られてしまう。エディの正体に恐れを感じた宿の夫婦はエディとジョアンの夫婦を追い出し、そのことによってエディは怒りを味わう。
町へ戻ったエディは配送トラックの運転手として働き始めるが、一時間半の所在不明を理由に解雇されてしまう。その一時間半の間にエディはジョアンを戸建ての家に案内していたが、エディはその家を買うためにすでに手付けを払っていた。仕事を失ったエディは残金を支払うことができなくなり、復職を求めて配送会社に雇い主を訪ねるが、冷たくあしらわれて遂に暴力を振るってしまう。
同じ頃、銀行の前に到着した現金輸送車をガス弾で攻撃し、輸送車ごと強奪するという事件が起こる。事件によって六人が死に、犯人は現場に帽子を残して立ち去っていた。新聞の一面を写真で飾った帽子はなんとエディのものであり、逮捕を恐れたエディはジョアンに助けを求めて雨の中を家へ走る。ジョアンは自首を勧め、エディは拒む。前科者の無罪を信じる者はいないというのがエディが拒んだ理由であったが、そうしているうちにエディはいきなり踏み込んできた警官によって逮捕され、エディの予想にたがわず陪審員はエディの前歴に注目し、エディに有罪を言い渡し、エディは死刑の判決を受ける。
この一連の経過によってエディは深い怒りを味わい、ジョアンは激しい絶望を味わう。そしてエディは刑務所の服役仲間の助けによって脱獄を果たすが、その前に過ちによって牧師を射殺し、その前には新たに発見された証拠がエディの無罪を明かしていた。
だがすべては手遅れであり、看守の弾丸で傷ついたエディはジョアンを呼び寄せ、ジョアンは永遠の愛を誓ってエディを救う。二人の逃避行が始まると二人はそろって賞金首のお尋ね者となり、二人が通過していった場所では皆が二人にかこつけて犯罪をおこない、二人のせいにするのであった。賞金が倍になった頃にはエディとジョアンの間に子供が生れ、二人はこれをベイビーと呼んで可愛がるが、ジョアンはこの子供を姉夫婦に預け、エディとともに国境を目指しす。その国境ではトンプソン・サブマシンガンを構えた警官が出迎え、エディは負傷したジョアンを抱いて森の中へと分け入っていく。国境を越えた瞬間、ジョアンは愛を囁きながら遂に息絶え、エディもまた国境越しに放たれたライフル弾によってあえなく倒れるのであった。
主人公二人を追い詰めていく善良な人々の貪欲と腐敗が恐ろしいのである。冒頭、官選弁護人の事務所の手際のよい描写(警官はただ果実を盗むのである)、その後に続く刑務所の中庭のこれまた手際のよい描写(牧師の審判に囚人たちの野球チームは不満を抱く)、ホテルの庭における予告的なカエルの描写、犯罪への誘いとさらに予告的ないくつかの描写(男は先へ行き、枕の下にはピストルが)、銀行の前でシェードを下ろした怪しい車が雨に打たれる、といった具合の凝った絵作りは見ていてなかなか心地よい。そしてエディ役のヘンリー・フォンダが実にいい演技をしていて、繊細そうな、ちょっと薄そうな顔の皮の下に怒りを潜ませ、いつも息を殺しているような雰囲気がなんとも言えない迫力があった。
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