スパイ・ゾルゲ
- Aloysius' Rating: 2/10
2003年 日本 182分
監督:篠田正浩
出演:イアン・グレン、本木雅弘、椎名桔平、上川隆也、永澤俊矢、葉月里緒菜、小雪


昭和16年。特別高等警察は朝日新聞社の尾崎秀実を逮捕して裸にむいた上で身体にいろいろな質問をし、新聞記者でドイツ大使館情報官のリヒャルト・ゾルゲを逮捕して、こちらは身体に質問しない。ゾルゲは尋問の席上でコミュニストのスパイという身分を認め、そして自らの波乱に満ちた過去を振り返り始める。どうやら話の主軸はゾルゲ事件ではなくて、昭和史を中心とした20世紀史の回顧にあったようなのである。だからなにかというと『その時、歴史が動いた』りするのだけど、とにかくそれが見れたものではない。撮影はただの思いつきのようにしか見えないし、台詞は未完成のまま垂れ流しだし、役者たちの無意味な挙動は出来の悪い学芸会によく似ている(それでも紫色の煙が流れない分、 『梟の城』 よりはましかもしれない)。薄っぺらなCG、安手な音楽、間を取るための間抜けな演出、そして肝心なところで題材に対する根本的な無定見は指摘しておくべきであろう。ゾルゲの話だからゾルゲが登場するのは当然だとしても、なぜベリヤやスターリンまでが顔を出すのか(三日月お月さまの下のクレムリンは笑えたが)。仮にそういう目論見であったとしても、話をむやみと広げた結果、何がなんだかわからなくなってしまったのではあるまいか。3時間という上映時間はただ要領の悪さだけを明かしている。どうせならば一種のソシオパスとしてのゾルゲを正面から描き出すべきであったし、そういうつもりでいっそコメディにすべきであった。

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