ファインディング・ニモ
- Aloysius' Rating: 8/10
アメリカ 2003年 100分
監督:アンドリュー・スタントン、リー・アンクリッチ
出演:アルバート・ブルックス、エレン・デジュネス


人間に息子をさらわれたカクレクマノミの父親がナンヨウハギのドリーとともにグレート・バリア・リーフからシドニーまでの大旅行を敢行し、サメやカメやクジラなどと遭遇する。ストーリーは 「モンスターズ・インク」 からストレートに発展しているようで、つまり、あれが父子関係の成立の物語ならば、これはその関係を再確認する話なのであろう。その背景に海中が選ばれて、間に浮かんでいる様々な物がぼんやりとしか見えない、というのは何やら象徴的な感じがする。
主人公が非力な点、周辺キャラクターが病的に歪んでいるあたり、子供たちが残酷で無様なところなどは、いかにもピクサー的でよろしいと思う。ドリーはどうやら安らぎの場を得られないために健忘症に陥っているし、サメのブルースたちはどうやら肉食に罪悪感を抱いていて、魚を断って禁酒プログラムさながらの集会を開いき、仲間同士で励ましあって暮らしている(でも血の臭いを嗅ぐともう駄目なのである)。水槽でニモと出会う魚たちはやっぱりどこか壊れているし、ニモのもらい手として登場する歯科医の姪のダーラは凶悪無比な人間として紹介され、登場するたびにホラーホーンが高鳴るのである。カモメの集団に至っては食べることしか考えていない。どうにも不健全なことになっていて、いくらかでもまともに見えるのはカメの群れと、ただ孤高を保っているクジラくらいなのであろうか。異様な人格造形はピクサーの魅力の一つであると考えている(パラノイアの発生頻度がとにかく高い)。造形と言えば、クマノミの立体的な造形は実に見事だし(前から見ると顔になるし、横から見ると魚になる)、その動作も実によく考慮されていて(まるっきり魚の動きなのに、ちゃんと演技が入っている)、手間のかかり方が桁違いであると感心する。立派な映画なのである。


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