わたしのグランパ
- Aloysius' Rating: 5/10
2003年 日本 113分
監督・脚本:東陽一
原作:筒井康隆
出演:菅原文太,石原さとみ,平田満,宮崎美子,伊武雅刀,浅野忠信,波乃九里子,嶋田久作
五代珠子は美術部に所属する中学一年生の女の子で、同級生によるいじめのごとき状況に遭遇しながらも概ね平穏に暮らしていたが、そこへ刑務所に13年間いた祖父の五代謙三が帰ってくる。祖母は場所がなくなったと宣言して家を飛び出すが、格別夫婦仲が悪いというわけではない。偽りを知らない生き方を目の前でやられると、どうにも疲れるというのが理由らしい。祖父謙三は町の人々に何事もなく迎え入れられ、思うままに日々を送り、そうしていると少女は同級生をいじめなくなり、一度は暴力に走った若者たちは反省をして矛を収め、ただ本物のヤクザだけは13年前の事件を思い出して挑んでくるので、これには道筋を与えなければならないのである。そうした祖父の生き方を孫娘の心の動きに絡み合わせながら巧みに描き出している。
もともとの素材がよいのであろう、という感想がどうしても先に立つのだが、それはそれとしても東陽一の演出、とりわけ室内シーンの演出は見ごたえがある。食事の場面や些細な台所の場面が比較的短いカット割で立体的に描かれているのには感心した。これに比べると屋外はやや平板な印象を否めない。場面のつなぎ方にも多少の疑問を感じたし、手持ちカメラの使い方にはもう少し配慮がほしかったところだが、全体に脚本がよく練られていてダイアログにも人物描写にも破綻がないので見ていて不快を味わうことは一度もない。これは素朴にありがたいことだし、日本映画においては珍しい。特に台詞に関して言えば演劇でもアニメでも、そしてしばしばテレビドラマでも可能なことが、なぜ映画では難しくなるのかがわたしには不思議でならないのだが、それはそれとしても監督がダイアログに十分な注意を払っていると、役者の台詞もきちっと入るのである。
で、その出演者が実に魅力的であった。菅原文太は言うことなしで、よく熟成したロバート・ライアンのような趣がある。浅野忠信、嶋田久作は作品に安定感を与えているし、宮崎美子はやはりうまい。これがデビュー作という(第27回ホリプロ タレンスカウトキャラバン・ピュアガール2002の)石原さとみも十代初めの少女をよく演じていた。テレビなどで見ていても最近は優れた子役が多いし、全体に役者には恵まれていると思うのである(ちなみに筒井康隆氏も最後の方のパーティの場面で一瞬だけ登場する)。というわけで、真面目なスタッフが真面目に作ればわが国でもいちおうはまともな映画が作れるのだという見本のような作品であった。
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