海の上のピアニスト
- Aloysius' Rating: 6/10
La Leggenda del pianista sull'oceano (Italy 1998, 125min.) Directed by Giuseppe Tornatore ScreenPlay Giuseppe Tornatore Cast:Tim Roth,Pruitt Taylor Vince,Clarence Williams III,Bill Nunn,Melanie Thierry,Peter Vaughan,Gabriele Lavia,Vernom Nurse,Harry Ditson

1900年の最初の月に客船ヴァージニア号で発見された赤ん坊は1900と名付けられ、そのまま船を降りることなく成長を続けて、やがて一等船客用ラウンジでピアニストとしての才能を開花させる。暴走にも等しい即興の技術で無名の曲を次々と生み出し、その評判は陸にも及んでジャズ・ピアニストからの挑戦を受けたりもするが、当人は決して船から降りようとしない。両大戦間の時代が終わり、第二次世界大戦が終わり、病院船としての務めを終えたヴァージニア号は爆破されることになる。かつてのバンド仲間が最後の瞬間にヴァージニア号を訪れ、遂にピアニストを探し当てて下船を勧めるが、ピアニストは人生の意味について語って船と運命を共にする。悪い人生だとは思わないけれど、ここまで自己完結しなければならない積極的な理由、あるいは積極的な消極的な理由というのを見つけることができなかった。ただ「思い」があるだけで、その「思い」にしてみても出所も文脈も明らかではない。精神的にも物理的にも、主人公の位置づけが唐突に過ぎて、おそらく不明な点が多すぎる。「"1900"の伝説」と断るのならば、その思春期にはすでに第一次世界大戦があった筈だし、語り手が33年で下船しているというのはいかにも逃げのように見える。それに舞台となるヴァージニア号自体も正体不明で、サイズにも設定にも無理がないだろうか。冒頭のナレーションから推定すると、おそらくこの話はイタリア人の移民の話から出発して、そのどこかでずれが生じて、ネガティブな箱庭的精神世界へもぐり込んでいったのではないだろうか。音楽は素晴らしいが、映画としてのまとまりは悪い。