2001年宇宙の旅
- Aloysius' Rating: 8/10
2001: A Space Odyssey (USA 1968, 139min.)
Directed by Stanley Kubrick
Written by Stanley Kubrick, (story:Arthur C. Clarke)
Cast: Keir Dullea, Gary Lockwood , William Sylvester, Ed Bishop
キューブリックは本質的に下手な監督だと思う。どの映画を見てもカットも音楽もぶつ切りだし、たいていは原作を殺している。もちろん原作と映画は別物だし、どんな原作であったも映画が映画として独立していればまったく問題はないわけだけど、キューブリックの場合はほとんど確信犯で殺しているとしか思えないことがある(サッカレーの原作をいったいどうすればああいう
「バリーリンドン」
に仕上がるのか?)。
にもかかわらずわたしは「2001年」を劇場で何回も見ているし、ほとんどすべての場面をスクリーン上の時間経過どおりに思い出すことができる。
最初に見たのは小学校2年生の時、今は亡きシネラマ劇場テアトル東京である。
実を言うとこの時のことはあまり覚えていない。かなり退屈もしていたようなのだが、小学校2年生であの映画では無理もないという気がする。それでもいくつかの場面は記憶に焼き付いていた。月面の場面、ポッド格納庫の場面、スターゲイトの場面などである。そして当時のわたしは何に対してもそうであったが、そうした場面の記憶についても強い恐怖を抱いていた。たいそうな怖がりだったことになる。月面の場面などはリゲティの音楽付きで夢にまで出てきた。トラウマと言えば大袈裟になるかもしれないが、しかしこの記憶が子供っぽい怖い物見たさを刺激し、説明できないような複雑な過程を経てわたしのSF原体験を形成しているのだと考えている。わたしにとって、当初SFとは限りなく怖い物で、怖い物だから見たい物だったことになるのだろう。そしてそこに「2001年宇宙の旅」の記憶が重なって;
SF -> 宇宙 -> 深淵 -> 落ちる
というイメージを無条件で当てはめるのである。たとえば
「アンドロメダ」
の公開当時、わたしはすでに小学校の高学年になっていたが、もうタイトルだけで宇宙の彼方の不気味な情景をああもあろうこうもあろうと勝手に空想して一人で怖がっていた。
だから1978年のリバイバル上映の時、まだ残っていたテアトル東京に通いつめるようにして何度も何度も「2001年宇宙の旅」を見たのは自分自身の自虐的な妄執を精算するためだったのかもしれない。おかげさまで
「もう恐れはしない」。